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2007年03月31日(土) 00時00分

県議選、51議席85人の選挙戦へ朝日新聞

 統一地方選の前半戦となる県議選が30日告示され、92人が立候補を届け出た。候補者数は田中康夫前知事の出直し選後に行われた前回03年の116人を大きく下回り、1979年(87人)、95年(90人)に次いで過去3番目に少ない。村井県政下初の県議選として、「必要な事業は行う」とする公共事業のあり方や、緊縮財政から積極財政へ転換した運営手法などに対するスタンスが主な争点となりそうだ。投開票日は4月8日。(五十嵐大介)

 26選挙区のうち、飯山市・下水内郡、東御市、南佐久郡、木曽郡、東筑摩郡、北安曇郡、上水内郡の7選挙区(いずれも定数1)が無投票になった。前回は旧佐久市区(同2)だけだった。

 92人の候補者の内訳は、現職53人、新顔35人、元職4人。新顔は、前回の72人から半分以下に激減した。前回17人と過去最多だった女性候補は15人になった。

 党派別では自民13人、民主6人、共産11人、社民2人、公明2人に加え、それぞれ県議会会派で政治団体の登録をしている政信会3人、あおぞら4人。それ以外の51人は無所属。

 立候補した現職53人のうち40人は、村井県政に与党的立場を取っている。自民党県議などの「知事与党」が勢力を拡大するのか、田中前知事の理念を継承する「親・田中」派が議席を増すのか。与野党の勢力争いが注目される。

 前回、候補者数が多い割に投票率は62・49%と過去最低だっただけに、どれだけ県民の関心を呼び起こせるかも課題となりそうだ。

■長野市/県庁前で演説合戦

 県内最多約30万人の有権者を抱える長野市区(定数10)。現職8人に、新顔6人と元職1人が挑む構図になった。

 党派別では自民3、民主2、社民1、公明1、共産2、県議会会派の政信会1、無所属5。各党候補がほぼ出そろい、支持基盤固めや無党派層の取り込みに激しい選挙戦が繰り広げられそうだ。

 各候補者は小雨のなか、午前8時半前後から事務所などで出陣式。多くはすぐに選挙カーに飛び乗って市内を回り、支持を訴えた。

 県庁前では、昼休みに食事に出る県職員をターゲットに複数の陣営が演説合戦を繰り広げた。ある現職候補は「議会改革にいっそう力を尽くしたい」。新顔の候補は逆に、「県議会に新しい風を」などと訴えた。

 市内756カ所にあるポスター掲示場は夕方までに、工夫を凝らした各候補者のポスターで埋まった。

■松本市/前知事票の行方がカギ

 合併で定数が6に増えた松本市区には、現職6人、新顔3人の計9人が立候補した。告示の9日前に、田中前知事の与党だった現職県議が突然、別の選挙区からくら替えして松本市区での出馬を表明。それまでの無風ムードが一変した。

 厚い組織票のある保守系現職の3陣営は「直接の影響はない」と静観するが、他の陣営は危機感を募らせている。

 昨夏の知事選で、田中前知事が松本市で獲得した約5万4千票の行方がポイントになりそうだ。ある陣営は「脱『脱ダム宣言』など、村井県政のスタンスを危惧(き・ぐ)する雰囲気が有権者に強まっていて、投票率によっては相当な激戦になる」。

 小雨と強風の中、各候補者は午前8時半ごろから、「日本と地方の転換点になる大事な選挙」などと第一声を上げ、精力的に市内を回った。

■上田市・小県郡/新顔加わり一変、選挙戦に嘆きも

 戦後初の無投票の可能性があった上田市・小県郡区(定数4)は、名乗りを上げていた現職の4人に加え、無所属の新顔が急きょ立候補し、一転して選挙戦に突入した。急な展開に、現職陣営は対応に追われ、「ダルマを用意していないし、当選を祝う会場もキャンセルしてしまった。意思表示が遅すぎる……」とぼやきも聞かれた。

 16日の事前審査に出席したのは現職4陣営だけだった。ところが29日夕方になって「5人目」が事前審査を受けたため、にわかに慌ただしくなった。30日に供託金60万円を納めて立候補した新顔候補は、取材に「現職は勝つ自信があるのだろうが、流れを変えたくて立候補した。選挙戦になれば活気づく」と話した。

 村井知事に批判的な立場を取る現職2人の陣営は、おおむね歓迎ムードだ。「候補の考えを有権者に知ってもらえるチャンスだから。ただ、無投票だと思っていたので、選挙運動の日程を練り直さなくてはならない」

 一方、「知事与党」の陣営。「油断していた。選挙戦になったことを後援会の役員に周知させたい」と、いらだちを隠さない。別の陣営も「選挙があるとないとでは、運動員の日当など経費のかかり方が違う」と嘆く。

 4人の現職に対抗する候補者が直前まで出なかったのは、なぜか。「現職それぞれに支持者がついており、バランスがいい。あえて出ようという人がいなかったのだろう」。地元国会議員の後援会幹部の分析だ。

 有権者にとっては選択の機会を失わなくて済んだが、上田市内のスーパーで買い物をしていた主婦(31)は「選挙はあった方がいいけれど、県議選は身近に感じないわね」と複雑な表情だった。(高田純一)

http://mytown.asahi.com/nagano/news.php?k_id=21000000703310003