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2007年03月31日(土) 22時53分

病気腎移植、4学会が否定 「妥当性ない」朝日新聞

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植について、日本移植学会、日本泌尿器科学会、日本透析医学会、日本臨床腎移植学会の関係4学会は31日、「医学的に妥当性がない」として、全面否定する声明を発表した。大阪市内で開かれた合同会議の後の記者会見で、日本移植学会の田中紘一理事長は「将来、腎臓病治療の進歩によって、病気腎を移植に使える可能性がでてくるかもしれない。しかし、現時点では、病気腎移植は実施するべきではない」と明言。事実上、国内での病気腎移植の実施は不可能になった。

 関係学会のうち、日本腎臓学会のみは「声明の中身に異論はないが、5月に予定している理事会の決定を経たい」と、この日は声明への参加を見送った。厚生労働省は、臓器移植法の運用指針に病気腎移植の禁止規定を加えるかどうか検討をする。

 声明はまず、万波医師らによる腎臓の摘出が医学的に妥当だったかどうかを、疾患ごとに検討。良性疾患のうち、ネフローゼについては、「十分な医療を受けていたという確証が得られない」▽尿管狭窄(きょうさく)、腎動脈瘤(りゅう)などについては「腎臓を温存する治療が第一選択で、摘出が医学的選択肢になるのは例外」▽感染症などその他の障害については「抗生物質などの投与で治癒に努めるべきだ」とした。一方、がんについては「摘出、部分切除など種々の選択肢がある」とした。

 そのうえで、摘出が認められた場合であっても移植が妥当だったかどうかを吟味。がんの患者からの移植は、「再発のリスクが高まる」と否定し、動脈瘤については「破裂の危険があるから摘出したのに、動脈瘤が治療されないまま移植されている」とし、「医学的な妥当性がない」と結論づけた。

 このほか、摘出や移植について説明がなされ書面による同意が得られているか▽どのような手続きで移植患者が選ばれたか▽倫理委員会などで検討がなされたか——などについても検証したうえで、「今回の一連の病気腎移植については、移植医療として多くの問題があったと言わざるをえない」と結論づけた。

http://www.asahi.com/national/update/0331/OSK200703310156.html