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2007年03月31日(土) 20時36分

日本統治時代のハンセン病施設、台湾で論議 朝日新聞

 日本統治時代の1930年にできたハンセン病療養施設をめぐる論議が台湾で熱くなっている。行政側は、古い建物に住む元患者の入所者に4月16日までの退去を通告、取り壊す方針を明確にした。入所者らは反対するが、周辺住民は「早く壊せ」と当局に迫っている。

豊かな緑に包まれた楽生療養院にある日本統治時代からの建物=台北県で

 この施設は台北県にある楽生療養院。その入り口を31日、大勢の警官隊が固めた。この日のデモで興奮した地元住民が入所者らと衝突するのを防ぐためだった。

 退去通告は地下鉄建設がきっかけだ。行政院(内閣)は3月初め、工事促進を台北県政府に通達。計画では施設敷地の大半は地下鉄の車庫になる。05年、近くに8階建ての新しい施設ができ、約270人の元患者が移った。残るのは45人。

 「50年以上暮らしてきた場所から冷たい建物に行きたくない」と元患者(77)は話す。部屋の前に大きなマンゴーの木。母親が40年近く前に差し入れたマンゴーを食べた後、まいた種が育った。

 古い建物を立ち退いた元患者も取り壊しには反対する。張文賓さん(78)は「社会から隔離されて過ごさねばならなかった私たちの体験が、建物がなくなれば忘れ去られてしまう」。入所者が高齢のため、学生らが支援組織を作って「取り壊し撤回」を政治家やメディアに働きかけている。

 住民のデモはこれに対抗するものだ。デモを計画した黄林玲玲・台北県議員は「強制隔離の苦しみは理解できるが、台北市中心部と結ぶ地下鉄を望む人も多い。入所者には地域全体のことを考えてもらいたい」と話す。

http://www.asahi.com/international/update/0331/013.html