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2007年03月30日(金) 00時00分

あしたの県議会 統一地方選を前に〈下〉朝日新聞

■新顔の挑戦 阻む壁  戦後最多の無投票か

 30日告示の県議選。14選挙区のうち8選挙区は無投票になる公算が大きい。そうなると、約30万人の有権者は、自らの1票で県議を選ぶことができない。「無投票=8選挙区」というのは、戦後最多の記録に並ぶ。

 立候補する人も減っている。今回予定しているのは57人で、戦後2番目に少ない。特に新顔は14人。前回03年に比べ7人減だ。

 無投票が増え、新顔が減る。補選も含め6期連続無投票となる見込み、という県議もいる。「新陳代謝」が進まない県議会。それはなぜか——。

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 「自民党では、現職が引退するまで、新顔には立候補を我慢させることがある」

 ある県議がこう明かした。

 保守的な風土の和歌山では、自民党が圧倒的な力を持つ、とされる。衆院も参院も、選挙区の国会議員は5人全員が自民党だ。ところが今回の県議選では、自民党公認の立候補予定者は現職のみの25人しかいない。定数は46。全員当選しても半数を2人上回るだけだ。大きく勢力拡大をねらう動きはない。

 「『野党』が弱いので、その『弱さ』の上にあぐらをかいてしまう」と同党県連幹部は話す。

 その「野党」。民主党はこれまでの県議選で、99年、03年と公認候補はゼロだった。昨年末、官製談合事件による出直し知事選で独自候補を擁立することができず、批判を浴びた。今回の県議選でも公認は2人。公募もしたが、選ばれたのは県議選では推薦1人だけだ。

 民主党最大の支持団体、連合の関係者はこぼす。「和歌山では、民主党から出ても勝てるかどうか。だから民主から立候補しようという新顔は、なかなか出てこない」

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 県議という仕事には魅力がないのか——。

 和歌山市内にある県議の事務所。2月初め、2人の大学生が議員インターンとしてやってきた。大阪工業大知的財産学部1年の中裕一さん(20)と、関西学院大法学部1年の石野郁恵さん(19)。2人はパンフレットをつくったり、ミニ集会に同行したり。中さんは「日常生活で見ることができない議員の仕事を見てみたい」、石野さんは「普通のバイトでは体験できない、有意義な経験をしたかった」と話す。

 この2カ月で、議員という仕事の大変さを痛感した。「地域の集会に参加するなど地道な活動が多いのに驚いた。有権者一人ひとりとコミュニケーションをとることが、票につながる」と中さん。将来は県議に? 2人とも首を横に振る。「その覚悟がない」と中さん。石野さんも「やりがいのある仕事だとは思うけど……」。

 でも中さんは、議員に対する考え方が変わった、と話す。「議員って利権とか、悪いイメージがあった。でも実際には、市民の声を聞き、市民のためにこうしたいと思って行動している人もいる。こういう議員を選んで増やすことで、何かが変わるんじゃないかな」

 4月8日に投開票され、新たな県議が選ばれる。さて、「あしたの県議会」は——。
(この連載は山尾有紀恵と根本俊太郎が担当しました)

http://mytown.asahi.com/wakayama/news.php?k_id=31000000703300003