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2007年03月30日(金) 00時00分

母子支える 夜間保育朝日新聞

 県内一のネオン街、徳島市の秋田町を抜けた雑居ビル2階に深夜、若い女性が次々とやって来る。金曜日から土曜日に日付が変わる頃、24時間保育の無認可保育所「みるくはうす」では、生後8カ月から小学校2年生まで22人の子どもが寝息を立てていた。

 「遅くなって、ごめんねー」と息を切らせて、4歳の長男を迎えに来たのは女性介護ヘルパー(22)。離婚して1人で家賃を払って、子どもを育てるには、ヘルパーの月給12万円では足りない。派遣会社に登録して夜は配膳(はいぜん)の仕事をしている。「預けたのは朝9時。長時間でかわいそうだけれど、生活していくためには仕方ありません。もうちょっと、母子家庭への補助がもう少しあれば楽になるのに」

 午前1時半、スナック勤務の女性(25)が、5歳の長男を起こして、手を引いて帰っていった。以前は昼間に飲食店で働いていたが、子どもが体調を崩す度に、休まなくてはならず、働きづらくなった。今は週に4回、スナックで働きながら、昼間は職業訓練校に通って就職先を探す毎日だ。「時間の融通が利いて、時給がいいのは水商売しかない。でも、ぶっちゃけ日雇いみたいなものだし、長くはできない。将来の保証は何もありません」と不安がる。

 同園は20年前、脱サラした杉山慶二さん(62)が開いた。保育料は昼間で月3万円、夜間で3万5千円。1時間300円で預かる臨時保育もしている。

 この日は、臨時が2人。残り20人のうち19人の保護者が、シングルマザーだった。保育料は開園時のままで値上げしていないが、生活が苦しく20万円近くを滞納する保護者もいる。子どもが好きで始めたという杉山さんは「滞納しているからといって、預かるのを拒否すれば、親は仕事ができないし、子ども一人を家に置いて出かけてしまうかもしれない」と心配する。

 保育所には児童福祉法に基づいた基準を満たして、県知事が認可する「認可保育所」と、いわゆる無認可保育所の「認可外保育施設」がある。

 県こども未来課が06年5月に調べたところ、県内に認可保育所は市町村立と私立合わせて223カ所、無認可は48カ所あった。無認可については県が年に1度、立ち入り調査をし、保育士の数や防火設備など、基準に満たない部分があれば改善計画の提出を義務付けている。

 みるくはうすは昨年、認可を受けようと県と交渉を始めた。補助金があれば、保育料を下げたり、設備を充実させたりできるからだ。

 しかし、認可を受けるためには条件がある。例えば、すべての子に保育所で歯科検診を受けさせなければならない。夜に来てくれる歯科医はおらず、「現状ではとても無理」だという。

 杉山さんは「行政の手が回っていない部分を担っている自負はある。昼間だけの保育所はすぐ認可するのに、うちのような最も切実な施設を助けてくれないのは不公平だ」と嘆く。

 現在、土日を含めて完全な24時間保育を行っている認可保育所はなく、みるくはうすを含め、徳島市に無認可が4施設あるだけ。県は「需要が少ないので、24時間保育をする公立保育所を作る計画は今のところない」と必要性を認めていない。

 ◆ 候補者アンケート

 県内の少子化に歯止めがかからない。1人の女性が一生に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が、00年以後、下がり続け、10年間上回っていた全国平均(1・26)に並んだ。どうすれば止まるのか。難題だけに、両氏の回答は近いものになった。

 今後4年間で、県内の少子化を止めることには、両氏とも「できる」と回答。山本氏は「若者の不安定雇用や長時間労働の是正を企業に働きかけ、男女がともに子育てに参加できる環境整備を全力で進める」とした。

 飯泉氏は、未婚、晩婚化が少子化の要因の9割との県の分析を示し、「男女の出会いの場づくりや若者の雇用の確保、働き方の見直し、地域の子育て力の充実などに取り組む」とした。

 共働き夫婦への県の支援についても両氏は「十分ではない」。山本氏は保育所や学童保育の改善を主張し、「出産、育児、仕事の両立を支援する体制と条件が弱い。子どもの医療費無料制度も7歳未満では不十分」。飯泉氏は06年度を「少子化対策元年」と位置づけ、「乳幼児医療費助成制度など支援拡充を図ってきたが、今後は、保育対策や育児休業が取りやすい職場づくりなどを充実させていく」と回答した。

 産婦人科医の不足についても両氏は「解消できる」とした。山本氏は「診療報酬の見直しと併せ、医師の多忙化を抜本的に解消する対策が必要」とした。飯泉氏は、徳島大学など関係団体との協力を強調し、「医療資源の集約化・重点化の検討を進め、ドクターバンク事業、女性医師の再就職支援などに取り組む」とした。

【質問】
 (1)今後4年間で県内の少子化を止めることはできますか
 (2)共働き夫婦への県の支援は十分ですか
 (3)産婦人科医の不足は解消できますか

 回答は○…はい(できる)、×…いいえ(できない)、△…どちらとも言えない

http://mytown.asahi.com/tokushima/news.php?k_id=37000000703300005