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2007年03月30日(金) 00時00分

国の責任 発生時焦点朝日新聞

●じん肺愛媛訴訟 きょう判決●
 注目される地裁判断

  トンネル工事でじん肺になったとして、元作業員ら27人が国に計約6億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、松山地裁で言い渡される。同種の訴訟を巡っては、東京など4地裁で原告側が勝訴。いずれもじん肺の防止策をとらなかった国の責任を認めたが、責任が生じた時期や必要だった具体的な防止策の内容などは地裁によって認定内容が異なっている。これらを巡る松山地裁の判断が注目される。 
(佐藤達弥)

 じん肺は、トンネルの建設工事などで大量に粉じんを吸い込むことで肺組織に病変が起こり、呼吸困難などの症状が現れる職業病。有効な治療法はなく、続発性気管支炎などの合併症で死亡する場合もある。

  全国での訴訟は、東京、広島、熊本など計11カ所の地裁と高裁で、患者約960人が国やゼネコンを相手取って係争中。松山地裁では03年9月に提訴され、67〜02年に全国の高速道などで工事に従事し、いずれもじん肺の労災認定を受けた愛媛、広島、岡山3県に住む53〜80歳の男性21人と、じん肺が原因で05年に78歳で死亡した愛媛県の男性の遺族6人が訴訟を続けている。当初、被告だったゼネコンなど53社とは今年1月、1人最大2200万円、計約2億5300万円を原告側に支払う内容で和解が成立している。

  原告側はこれまでの口頭弁論で、国は省令を制定せず規制権限を行使しなかった責任があるほか、ゼネコンへの発注者として安全に配慮する義務に違反していた、と指摘。建設現場の粉じん量の測定や散水、湿式削岩機や防じんマスクの使用、粉じんを吸い込まないよう発破の際に退避時間を確保することなど、防止措置を義務づけるべきだったなどと主張してきた。一方、国側は省令制定や行政指導の義務はなく、労働者との間に指揮監督の関係がないため、安全への配慮義務もないと反論している。

  東京、熊本、仙台、徳島の4地裁とも原告側の主張内容に大きな相違点がなく、いずれも国が規制を怠った責任を認定した。ただ、責任が生じた時期について、徳島、熊本両地裁が60年、東京、仙台両地裁が86年と食い違い、東京、仙台両地裁が散水の義務づけを否定するなど必要だったと認定した部分も4地裁で一部異なっている。

  仮に責任が生じた時期が86年と認定された場合、愛媛の原告では計6人が請求を退けられる可能性がある。弁護団の中尾英二弁護士は「責任が生じたのがより古い時期と認められれば患者の救済範囲が広がるが、原告団全体として国の責任が認められることが最も重要」 と話している。

http://mytown.asahi.com/ehime/news.php?k_id=39000000703300005