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2007年03月30日(金) 00時00分

苦味潜ませ「口笛ソング」 スウェーデンの3人組朝日新聞

 あの口笛、何という曲?

 そんな問い合わせが、昨年から各地のFM局に相次いで届いたという。イントロで流れる軽やかな口笛。その主はスウェーデンからやってきた3人組、曲は「ヤング・フォークス」だ。

 輸入盤の段階でじわじわ話題になり、日本盤の発売前に東京のJ—WAVEではチャート1位に。欧州でも人気を呼び、音楽好きのシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドは、昨秋のパリ・コレクションで「口笛ソング」を採用した。

◆今夏のロック・フェスティバルへの出演で、再来日を予定

 「仰々しいのは嫌い。自然体であること。それが僕らの生き方、音楽なんだ」。ベースのビヨーンは、プシュッと缶ビールのプルトップを引いて話した。新進バンドのプロデュースなどを手がけ、スウェーデンの音楽シーンではちょっとした人物らしい。バンド名も3人の名前を並べただけ。その時々のありのままの自分たちを見て欲しい、という思いからだという。

 わかりやすいメロディーに宿る陰りがスウェディッシュ・ポップスの魅力だ。日本では90年代後半、カーディガンズなどが人気を博した。3人の音楽もその流れをくむ。ベース、ドラムのリズムはシンプルで、ギターも前面に出たりはしない。代わりに口笛やら、シュッと吐く息やら、ギターの弦の摩擦音をアクセントに使う。

 「僕らが目指すのは大人のためのポップミュージック。ごてごてした装飾はいらないと、どんどん音をそぎ落としていったんだ」とギターのピーター。「子どもの頃は色々と乗っかったピザが好きでも、大人になるとチーズとトマトだけでおいしく感じられたりするでしょ」と言うのは、ドラムのジョンだ。

 音作りだけではない。一見ラブソングばかりの新作アルバム「ライターズ・ブロック」には、大人たちへのメッセージをしのばせる。色んな経験を積んで今がある、これからもきっとやっていける——。軽やかな「口笛ソング」にもそんな思いを託した。

 ただし、「大人のポップミュージック」が基本線である。ほろ苦い現実も忘れていませんよ、とばかり、ゆがんだ音がそこここにちりばめられている。長い人生、口笛ばかりとはいかないのだ。

 「僕たちはノイズだって楽しめるはずさ。今度はこんなので曲を作ってみようかな」。ビヨーンは飲み干したビールの空き缶をカンカンカンッと指ではじいて見せた。

    ◇

 〈Peter Bjorn And John〉 ピーター・モーレン(30)、ビヨーン・イットリング(32)、ジョン・エリクソン(32)。00年の結成で、昨年発表の3作目のアルバム「ライターズ・ブロック」で日本デビュー。3月に初来日し、東京、大阪で公演した。

http://www.asahi.com/culture/music/TKY200703300276.html