記事登録
2007年03月30日(金) 21時25分

原発「不適切な事案」、97件 東電含め電力7社朝日新聞

 全国の12電力会社は30日、発電所におけるデータ改ざんやトラブル隠しに関する調査報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出し、不適切事例4518件を報告した。うち原発関連は7社で97件あった。東京電力は福島第一原発(福島県)2号機で84年に起きた原子炉緊急停止を隠していたと報告したほか、同3号機で78年に起きた制御棒脱落は臨界事故に至っており、それを隠していたと断定した。

「不適切」と発表した事案の件数

会見の冒頭、頭を下げる九州電力の幹部 東京支社・村上省三原子力グループ長(手前)ら=30日午後、東京・大手町で

記者会見で頭を下げる東北電力の幹部ら=30日午後、東京・大手町で

記者会見で頭を下げる関西電力の幹部ら=30日午後、東京・大手町で

記者会見で頭を下げる東京電力の幹部ら=30日午後、東京・大手町で

データの改ざんや必要な手続きの不備があったとして、頭を下げ謝罪する浅野晴彦・中部電力副社長(右端)ら=30日午後、名古屋市東区の中部電力本店で

制御棒トラブルがわかった全国の原発

 調査対象は原子力、火力、水力の約1400発電所。不適切事例の内訳は原子力97件、火力148件、水力4273件。河川法に基づく看板設置などの届け出を怠った事例約3500件を含めた東電の件数が突出するなど、各社で集計の基準や力の入れ方などが一様でないため、結果的に数字は大きく違っている。

 福島第一原発2号機では84年10月、原子炉起動時に緊急停止装置が働いたが、運転員が記録を改ざんして国や地元に報告しなかった。運転員の想定より速く核分裂反応が進み、数秒間臨界状態になった。当時、原子炉建屋内では約150人が作業していた。基準を上回る被曝(ひばく)はなかったが、東電は「原子炉建屋内で作業しているのに、臨界に達してしまったのは不適切だった」としている。

 また、福島第一原発3号機の78年の臨界事故では、運転員は制御棒の脱落に気づかず、臨界状態と判断できないまま7時間半も放置し、記録を改ざん、事故を隠していた。

 制御棒脱落は99年の北陸電力志賀原発(石川県)1号機での臨界事故のほか、東電、東北電力や中部電力の8原発で起きていたことが判明。最も早かった福島第一原発3号機の臨界事故で情報が共有されていれば、以降の発生は防げた可能性があった。

 保安院は30日、原子炉メーカーの日立と東芝に、一連の制御棒脱落について報告書を提出するよう求めた。

 一連の不祥事を受けて、東電は同日、勝俣恒久社長ら64人を減給などとする処分を発表した。勝俣社長と田村滋美会長が3カ月間10分の3の減給、林喬副社長ら3人が3カ月間100分の15の減給など。

 一方、日本原電は敦賀原発2号機(福井県敦賀市)で97年7月に原子炉格納容器の気密試験で国の検査官をごまかした問題について、不正の実行者や不正を指示した者は明らかにできなかったと報告し、調査の限界を示した。

 また、北陸電力は、志賀原発1号機の臨界事故隠しについて本店は関与しておらず、同時に二つの点検作業をしたのが原因の一つだったと報告した。

http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY200703300341.html