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2007年03月29日(木) 00時00分

さらばウェブブラウザー!?アドビが仕掛ける新戦略読売新聞


アポロの技術を使って作ったオークションサイト「eBay(米国版)」専用ソフト。独自のウィンドウ形状、ドラッグアンドドロップによる操作など、ウェブブラウザーでは不可能な快適な操作が可能
ソフト開発に朗報、常識を覆す新機能

 あらゆるインターネットサービスの入り口となるウェブブラウザー。何をするにもウェブブラウザーがなくては始まらない。こんな常識を覆す動きが静かに進んでいる。合言葉は「脱ウェブブラウザー」。今年後半からネットサービス専用の使いやすいソフトが続々登場しそうな気配だ。

 ネットバンキングにネットトレーディング、ショッピング、オークション、ブログ、地図サイト、動画投稿サイト、SNS、ウェブメール、写真現像サービス……。仕事から趣味まで、ネット上にはあらゆるサービスがそろっている。内容は千差万別だが、使い勝手で共通している点が1つある。使い始めるにはまずインターネットエクスプローラやファイアフォックスといったウェブブラウザーを立ち上げなければならない。大半のサービスは、あたかもOSのように振る舞っているこのウェブブラウザーの上で動いている。 利用者はこうした現状にそれほど不便を感じていないかもしれないが、実は、サービス提供側は多くのフラストレーションを抱えている。

 サービスに特化した使いやすい画面を設計しようとしても、ウェブブラウザー上で動く以上、ウィンドウの形状や、ファンクションキーの役割などは勝手に変えられない。また、利用者側のハードディスクにファイルを読み書きするような機能を組み込みたいとしても、ウェブブラウザーの強固なセキュリティー機能はそれを許さない。ブログ更新時、記事を書いている時はネットにつながっている必要はないのだが、ウェブブラウザーを使う以上、ネット接続は前提になってしまう。また、オンラインバンキングで「戻る」ボタンを押したら認証が切れてしまった、フォームに入力した内容が消えてしまったなど、細かいことではあるが不満を感じているユーザーは多いはずだ。

手軽にソフト開発

 こういった課題をクリアするには、ウェブブラウザーを使わなければよい。例えばアップルの音楽配信サービス「iTunesStore」(アイチューンズストア)から音楽を購入する際、ウェブブラウザーを使う必要はない。再生機能やデータベース機能を一体化した専用ソフトの使い勝手はよく、ウェブブラウザーで楽曲を購入する他の配信サイトに比べ、使い勝手は格段によい。ただ、このような専用ソフトを作るにはとても手間がかかる。

 アドビシステムズが、こうしたソフトを容易に開発できる仕組み「アポロ」を準備している。ソフトの開発環境なので一般ユーザーには直接関係ないが、ソフト開発者やサービス提供側にとっては非常に興味深い技術なのだ。

 この仕組みを一言で表現すれば、従来のウェブページ作成のノウハウやスキルを使って、ウェブブラウザーの制限を受けずに独立して動くネット対応ソフトを簡単に作ることができる、ということだ。

 上の写真はアドビシステムズがデモ用に用意している米国のオークションサイト専用ソフトだ。アイコンをダブルクリックするとこのような画面が立ち上がり、商品の検索、ウオッチ、応札、商品の画像撮影・アップロードから出品など、すべてこのソフトでできてしまう。しかもオークション運営側のサーバーに変更を加える必要はない。

 こんな便利なソフトがサンデー(日曜)プログラマーにも制作可能なのだ。アドビによると準備が整うのは今年後半で「面白いソフトがどんどん出てきますよ」ともいう。

 ビスタやグーグルのガジェット、ヤフーのウィジェットなども脱ウェブブラウザーを果たしたネットソフトだ。ウェブブラウザーの中で動いた方が都合のよいソフトもたくさんある。それでも、ネットバンキング専用ソフトや、プロバイダー専用メーラーなど、使い勝手が優れたネットソフトが今後、続々と登場してくるのは間違いなさそうだ。(南部健司・フリーライター/2007年3月24日発売「YOMIURI PC」2007年5月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20070329nt13.htm