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2007年03月29日(木) 08時40分

半島到着後96時間で前線へ、対北朝鮮 米韓軍事演習朝日新聞

 米韓合同軍事演習が28日、内外メディアに公開された。朝鮮半島有事の際、米軍が持つ韓国軍の作戦統制(指揮)権が12年に韓国側に移管されることが決まってから初めて。米軍の増援維持が今後の課題だが、米軍司令官は「増援部隊は、到着後96時間のうちに戦闘地域に参加させる」と述べ、増援軍の迅速な展開を重視する姿勢を示した。

 公開されたのは、25日から慶尚北道・倭館の在韓米軍基地「キャンプ・キャロル」で行われている戦時増員演習(RSOI)の一部。合同野外機動演習「フォール・イーグル」も並行して行われており、米軍から原子力空母「ロナルド・レーガン」を始め、増援の6000人を含む、総計2万9000人が参加している。

 同基地には、増援軍のための武器弾薬や医薬品などが集められており、一個旅団の通常装備を補給、整備する能力を持つ。28日は、車両に積み込む装備の点検や整備、輸送作業が行われた。00年夏に実戦配備され、戦闘地域まで自力で移動して戦車などを修理する車両も公開。貨車に積み込まれた戦闘車両は2日で前線の作戦地域に輸送されるという。

 こうした演習が重視されるのは、北朝鮮軍が、米軍の増援前に大勢を決する「速戦即決」戦術を取ると予想されるからだ。韓国国防白書によれば、北朝鮮軍は地上軍の7割を南北軍事境界線近くに配置。1時間でソウルの大半を壊滅できるという。統一研究院の鄭永泰北韓研究室長は「この戦術に沿う限り、北朝鮮軍は精強。必要な演習も十分実施している」と説明する。

 朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は28日、「挑発的な北侵合同軍事演習」と伝えるなど、強く反発している。演習が北朝鮮の戦術の無力化を狙っていることを、十分に意識しているようだ。

 一方、韓国政府は、戦時作戦統制権の移管に伴い、有事の際に総計69万の米軍増援をうたった共同作戦計画「5027」を見直す方針だ。関係者からは「今度は米側も増援の数まで約束しないのではないか」と心配する声も上がっている。

 演習に参加した米陸軍第19支援司令部司令官のレイモンド・メイソン少将は28日、移管に伴うRSOIの変化について「個人的見解だが、在韓米軍と韓国軍の論議を経て決められるはずだ」と語るにとどめた。

http://www.asahi.com/international/update/0329/003.html