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2007年03月29日(木) 00時00分

小松政夫「植木さん寝てるみたいだった」朝日新聞

 呼吸不全のため80歳で亡くなった俳優、植木等さんの通夜が28日夜、親しい関係者のみが参列して行われた。参列した元付き人で俳優小松政夫(65)は、3月に再入院してからの呼吸さえままならなかった闘病中の植木さんの様子を明かした。最期はみとれなかったが、穏やかに寝てるようだったという。

 植木さんは呼吸困難に耐えながら、延命治療拒否の道を選んでいた。

 3月上旬、小松は現在の植木さんの付き人から再入院の連絡を受けた。それによると、苦しそうに呼吸する植木さんは水の中でアップアップして、おぼれているような感じだったという。

 小松は2月末から名古屋で長期公演のため、1月下旬、自宅の植木さんを見舞った。普段は2〜3時間話すのが恒例だったが、その日は玄関で迎える姿も腰が曲がり疲れた様子だった。「すぐに遠慮して帰ったんですよ」。それが、最後になった。

 植木さんを最も間近で観察した小松はその生きざまを「芸人ではない、職人だった」と振り返った。コメディアンとして、俳優としての才能はもちろん、歌手としても声楽家にしっかり学んだプロだったという。

 多忙だった全盛期、移動車中に初めて譜面を手にし、30分ほど鼻歌で練習したままレコーディングに臨むことも多々あった。「声の出し方も違いますから。鼻歌だけで、本番もとりあげてしまうんですから。確かな腕を持った職人でした」。師弟関係においても怒鳴ることは1度もなかった。弟子を1人の人間として扱った。

 植木さんは、小松の名古屋公演が千秋楽を迎えた翌日、今月27日に亡くなった。「4〜5分の差で間に合わなかったんですが、それでも、僕を待っててくれたんだと思う。今は…あのスーパーマンがたくさん病気して、苦しんでね。ゆっくりしてくださいと…言ってあげたいですね」と話した。付き人時代から40年。「親と同じですから」という小松の声は疲れ切っていた。悲しみは深かった。

http://www.asahi.com/culture/news_entertainment/NIK200703290006.html