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2007年03月29日(木) 00時00分

補選「身内」同士争う朝日新聞

 「県連代表の首をかけてやります」。民主党県連代表の玄葉光一郎衆院議員は力をこめた。

 参院補選の告示まで約2週間と迫った18日、郡山市内で開かれた、同党公認の増子輝彦・前衆院議員(59)の事務所開きでのことだ。

 同じ日、そこから2キロほど離れた空き地で自民党公認の山口勇・元県議会議長(69)の事務所開きがあった。マイクを握った、同党の根本匠・衆院議員は「この選挙区で汗を流してきたのは自分です」と、衆院福島2区で争った増子氏を批判して、「山口氏を参院の壇上に送るため支援をお願いします」と訴えた。

 増子、山口の両氏とも郡山出身。補選は、この商都を舞台にした「郡山決戦」とも言われる。とはいえ、両陣営の「後見人」に目をやれば、対決とは異なる構図が浮かび上がってくる。

 ●娘婿と後継者

 玄葉氏は、佐藤栄佐久前知事の娘婿。お隣の衆院福島3区の玄葉後援会の支持者たちは前知事後援会と重なる部分が大きい。郡山の前知事後援会の幹部が「栄佐久さんの熱烈な支持者は3区内の知り合いに働きかけたりして玄葉さんを側面支援していた」というほど、密接につながっている。

 一方の根本氏も「佐藤栄佐久が作った」とも言われる。同市を地盤としていた粟山明・元衆院議員が引退後の93年、その後継者として当選したのが、旧建設省の官僚だった根本氏だ。前知事が自ら、当時の同省事務次官に働きかけて立候補を促した、という。根本氏はその後、前知事後援会の支援を受けて当選を重ねてきた。

 山口氏も、根本氏の擁立にかかわり、選対本部長をつとめた。補選は前知事の「身内」同士のぶつかり合いでもある。

 「今回の補選は、山口の選挙じゃない。根本の選挙だと思ってやってくれ」。前知事後援会の元幹部で、根本後援会の幹部も務める男性が17日の後援会役員会で、そう檄(げき)を飛ばした。

 ●票の流れ未知

 山口氏も「根本さんは私が育ててきた。一体でがんばっていきたい」と根本氏の支援に期待を寄せる。県議選と重なり、実働部隊が動けない状況で、根本氏の支援は欠かせない。ただ、山口氏と前知事の支持者は必ずしも重なっているわけではない。根本後援会の別の幹部は「栄佐久さんの支持者が、どこまで山口氏を一生懸命やるかは疑問。少なくとも根本に入れていた票が、そのまま山口に流れることにはならない」と見る。

 一方、玄葉氏の3区では安定した地盤を持つ。05年の衆院選では14万3千票を獲得。対立候補に8万票近い差をつけた。3区の街頭の広報板には玄葉氏と増子氏が一緒に写ったポスターが張られている。「増子さんは2区以外で知名度が低いから、知名度不足を補い、玄葉さんからの支援をアピールするのが狙い」(増子選対幹部)だという。ただ、こうしたセット戦略が、前知事の支持者に浸透するかどうかは未知数だ。3区に含まれる須賀川市の前知事後援会の幹部は「今まで栄佐久の親類だから玄葉さんを推してきた」としながら、「玄葉さんが増子さんを推しているからといって、増子さんを支援しようという論理にはならない」とも言う。

 3区内に地盤のある県議の一人は「玄葉氏も根本氏も、佐藤栄佐久氏の『傘』の下で選挙をしてきた部分がある。傘がなくなれば、お互いの実力で、どこまで票がのばせるか。今回の補選の一つのカギになる」。
 (この連載は、神庭亮介、立松真文、古田真梨子が担当しました)

http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000703290005