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2007年03月29日(木) 00時00分

派遣職員の給与返還訴訟 住民が逆転敗訴朝日新聞

◇高裁判決 久喜市の違法性認めず

 久喜市が土地区画整理組合に派遣した市職員に給与を支払ったのは違法だとして、住民が市を相手に田中喧二市長らに約3710万円の返還を求めた住民訴訟の判決が28日、東京高裁であった。

 南敏文裁判長は、職員派遣を違法と認め市長らに約1460万円の返還を命じた一審さいたま地裁判決を取り消し、住民の請求を棄却する逆転判決を言い渡した。

 判決後、原告の黒瀬延昌さん(73)は「全く乱暴な判決だ。請求権放棄がまかり通れば住民訴訟が空洞化してしまう」と上告する意向を示した。

 この訴訟は、職員の派遣は地方公務員法に違反するとして、住民3人が提訴。06年3月の一審判決は職員の給与の半額を市長らに請求するよう命じたが、東京高裁で係争中の同6月、訴えの効力をなくそうと市議会が市長らに対する損害賠償請求権を放棄する議決を可決。市側は控訴審で「議会が権利放棄の議決をした以上、権利行使が出来ない」と請求の棄却を求めていた。

 この日の判決は、土地区画整理事業の公益性や公共性を認めた上で、派遣された職員は「市の指揮監督下にあり、市の事務と同一視できるような事務に従事していた」とし、派遣に違法性はないと判断、請求を退けた。

 さらに請求権放棄の議決について、南裁判長は「住民訴訟が提起されたといって、議会の議決を妨げるものではない」と付け加えた。住民側は「住民訴訟の意義を無視するもので違法」と主張していた。

 田中暄二市長は「市の主張通り、派遣の根拠があったことを認めてくれた判決だ」と話し、新井勝行・市議会議長も「議会の議決が正しく評価されたものと思う」とコメントを出した。

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