都知事選と同日の４月８日に投票される都議補選が３０日、６区と１市の７選挙区（いずれも被選挙数１）で告示される。都選挙管理委員会によると、補選の数としては過去最多。うち６選挙区で自民と民主、共産が公認あるいは推薦候補を立てて激突する見通しだ。補選前の都議会の会派構成は自民が４４、民主３４、公明２２、共産１３、生活者ネット３、無所属４。補選で勢力が大きく変わることはないが、各党は知事選と補選の結果が互いに連動するとして、立候補予定者の支援に力を入れている。
◇江東区
区長選に立候補する自民都議の後継選びで自民が分裂。公認は米沢正和氏（８０）＝２８日付で区議辞職＝だが、区議の鈴木清人氏（５１）＝区議辞職＝が自民を離脱して立候補を表明、自民党衆院議員の元秘書、関宏毅氏（４１）も無所属での立候補を決めた。共産は元職の東巨剛氏（７０）を擁立し、革新議席の獲得を目指す。
◇大田区
自民都議が２月に区長選に立候補を表明、直後に自民が区議の鈴木章浩氏（４４）を擁立した。民主は区議の田中健氏（２９）を、共産も区議の渋谷要氏（７３）＝２８日付で区議辞職＝をそれぞれ擁立した。無所属で元衆院議員秘書の石原聖康氏（４８）、会社経営の木村寛紀氏（２９）も名乗りを上げ、さらにもう１人が立候補の動きを見せており、乱立模様だ。
◇世田谷区
昨年７月の公明都議の死去を受け、各党は早くから選挙準備を進めてきた。自民は元職の真鍋欣之氏（５０）、民主は、生活者ネットが公認した区議の西崎光子氏（５２）を推薦した。区長選でネットと共闘する共産だが、「補選は別だ」として今年に入って民青地区委員長の佐藤直樹氏（２７）を擁立した。
◇板橋区
板橋区選挙区（定数５）で唯一の自民都議が区長選に立候補を決め、補選に。自民は区議の菅東一氏（６２）を擁立し、議席維持に臨む。３議席目を狙う民主は食品卸会社長の北条博一氏（４６）を立て、共産は党地区常任委員の佐々木健市氏（４７）が２議席目に挑む。
◇足立区
６月の区長選に立候補する自民都議が辞職。民主は党都政策委員の鈴木勝博氏（４９）、共産は２７日に区議を辞職した渡辺修次氏（６６）を擁立した。自民は元職の三原将嗣氏（６４）を公認したが、これに反発した自民区議の浅古充久氏（３７）が無所属での立候補を表明、保守分裂となった。
◇江戸川区
７月の参院選比例区で自民の都議が同党から立候補を予定し辞職、自民は元職の田島和明氏（５６）、民主は区議の田之上郁子氏（３６）を公認し、早くから準備を進めてきた。３月に入り、共産も機関紙記者の島津一成氏（３３）を擁立した。
◇町田市
昨年２月の市長選で民主都議が立候補したことに伴う補選。７選挙区の中で唯一、自らの事情で議席を失った民主は、市議４期目だった今村路加氏（３８）の擁立で回復を目指す。自民も市議４期目だった吉田勉氏（５８）を公認、共産は党地区常任委員の古橋良恭氏（４５）を擁立した。
■都議補選７選挙区の構図■
選挙区 補選の理由 補選前議席 立候補予定の党派
江東区 区長選出馬 自民 〈自〉〈共〉無無
大田区 区長選出馬 自民 〈自〉〈民〉〈共〉無無
世田谷区 死去 公明 〈自〉〈ネ〉〈共〉
板橋区 区長選出馬 自民 〈自〉〈民〉〈共〉
足立区 区長選出馬 自民 〈自〉〈民〉〈共〉無
江戸川区 参院選出馬 自民 〈自〉〈民〉〈共〉
町田市 市長選出馬 民主 〈自〉〈民〉〈共〉
（注）四角囲み文字は公認の政党
■春せんきょの気分 国分寺
昨年夏、甲子園での早稲田実業の活躍にわいた国分寺駅前の商店街。優勝を祝ったのぼり旗がひとつ今も外されずに風に揺れていた。残しているのは果物店を営む延命（えん・めい）利明さん（６７）。「私の感動はいまだに冷めていない。夏まで掲げておこうと」
店は創業７５年。果物のほか、果実を使ったケーキも製造。店先には甘い香りが漂う。昨年秋、地元の子供たちがイチジクを見せてほしいと訪ねてきた。教科書に出ていたが実物は知らないという。
延命さんの妻が「味は知っているの」と切って差し出すとみんなで口に含んだ。そのあと、子供たちが手紙を届けにきた。「ありがとう」「がんばって」。先生や子供の親もお礼を言いにやってきた。夫妻の心は安らいだ。
商店街では再開発の計画も進む。「街の様子が変わっても、温かな人情だけは残しておきたい」と延命さん。
前回の知事選は、手腕が力強いと感じた候補者に託した。「でも、最近はその力強さが政治家のおごりと感じてしまうことがある」。政治も街も人情は変わらないでほしいと願う。
（石川幸夫）
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000703290001