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2007年03月29日(木) 00時00分

引退で問う自治 上原・国立市長3選不出馬朝日新聞

 都内初の女性首長として登場し、景観権や平和問題、住民基本台帳ネットワークの切断などで独自の施策や意見を発信してきた東京都国立市の上原公子市長(57)が、2期8年で引退する。4月の市長選を前に、3選出馬を期待していた支持者の戸惑いは、いまだに収まらない。市長野党が過半を占める議会の運営に苦しみ続けた上原氏の「引退」には、自治のあり方を市民に問いかける意味が込められていた。 (五十嵐聖士郎)

 上原氏は昨年末、有力支持者らに一時、立候補の意向を見せたが、2月になって急きょ不出馬の意向を明かした。

 不出馬はぎりぎりまで迷ったという。「議会との対立を続けることが市民にとって良いことなのか」と悩む一方、「全国から注目を集める国立の市長を自ら辞められない。これだけ議会からたたかれれば強くなる」と意欲はあった。周囲からの出馬の求めには、任期満了まで戦い続ける姿勢を示すためにも立候補の意向を伝えていた。

 しかし、昨年12月末の議会で、国立第六小学校の用地買収案を野党の反対多数で否決された。借地のままでは同小で今後、改修工事などができず、「議会との対立は市民に不幸をもたらす」との思いを強めた。

 この直後、立候補しないことを決断した。

 「私と対抗して議会があるわけではない。議場は市民の幸せのために政策を議論する場。議会とは何なのかをもう一度お考え頂きたい」

 3月定例市議会最終日の27日、辞任のあいさつで、市長批判の先頭に立つ野党市議を名指し、思いをぶつけた。

 JR中央線の高架化工事に伴う国立駅舎の保存問題では、「市長選前に市長の手柄にしたくない」(ある野党市議)などと一昨年以降、保守系の野党会派は、関連議案のほとんどに反対した。

 こうした市議会との関係を、上原氏は「市民にとって不幸」と言う。これに対し、自民党新政会の市議は「われわれ議員も選挙で選ばれた市民の代表。市長は一部の市民ばかりもてはやし、その他の市民の意見を無視している」と反論する。

 上原氏は「すべての案件について議員は市民から託されていないはず。市民は選挙後もチェックし続けないといけない」と語る。

 ある市幹部は「市長の言葉通り、不出馬は市民へのメッセージの意味が大きいのだろう」と「引退」の真意を推しはかった。

http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000703290002