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2007年03月28日(水) 21時18分

賠償額9分の1に減額、栃木リンチ国賠訴訟 東京高裁朝日新聞

 99年に起きた栃木県の会社員須藤正和さん(当時19)のリンチ殺人事件をめぐり、県や加害少年の親を相手に遺族が約1億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。富越和厚裁判長は、家族の捜査依頼を失念した警察官のミスがなければ、殺害を阻止できた可能性があるとし、県に1100万円の賠償を命じた。加害者の親に対する請求は棄却した。

 一審・宇都宮地裁判決では、捜査の怠慢と殺害の因果関係を認めて県の賠償額を9600万円と算定。控訴審判決では、捜査ミスと死亡の直接的な因果関係を認めず、賠償額を一審の約1割に減額した。

 判決では、須藤さんの家族が、銀行から「現金を引き出しに訪れた須藤さんが負傷していた」と連絡を受け、殺害7日前に県警に捜査を依頼したのに警察官が失念したと指摘。「防犯カメラの画像を取り寄せるなど対応する義務があった」として県警のミスを認定した。その上で、ミスがなければ殺害を完全に阻止できたとまでは言い切れないとした。

 医療訴訟では、ミスと患者の死亡を直接的に結びつけられない場合でも、一定の割合で「延命の可能性に対する損害」を認めていることを参考に、須藤さんのケースでは、捜査ミスで「生存可能性」が3割程度失われたと判断。県が負うべき損害額を1100万円と算定した。

 須藤さんの父光男さん(56)は判決後、「県警に配慮した判決で納得できるものではない」と話した。

http://www.asahi.com/national/update/0328/TKY200703280342.html