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2007年03月28日(水) 01時06分

「まずいもん」一転、ヒットの黒酢 タマノイ酢社長語る朝日新聞

 粉末酢「すしのこ」で知られるタマノイ酢(本社・堺市)は、寿命の長いヒット商品を世に送り出してきた。「すしのこ」は発売から40年以上。96年発売の健康飲料「はちみつ黒酢ダイエット」も6億本以上を出荷した。競争の激しい食品市場で、ロングセラー商品を生み出す秘密はどこにあるのか。播野勤(はりの・つとむ)社長(53)に聞いた。

 ——「すしのこ」に続き、「はちみつ黒酢ダイエット」も息の長い商品になりましたね。

 「入社2年目の女性社員を中心に開発した。黒酢なのにパッケージは赤。お年寄り向けというイメージを打ち破った。堺の酒屋を通じて口コミで広がり、女子高生も飲むようになった。実は、『まずいものナンバーワン』とも評され、やめていたかもしれない商品。どこかで喜んでくれる人がいると信じて食らいついた結果だった」

 ——商品開発で心がけていることは?

 「店頭では数多くの商品が出ては消えていく。一過性の目新しさに頼らないブランドづくりに力を入れる。食品にとらわれず、健康、美容など付加価値を得られる分野で酢を生かす」

 「03年から異業種と組み、商品開発をしてきた。営業担当は、飲食店だけでなく、医薬品、酒、菓子メーカーなどに足を運んだ。常盤薬品工業と健康補助食品、扇雀飴本舗とのどあめを製品化。ポッカコーポレーションとは、ポン酢開発にこぎ着けた実績がある。可能性があれば、技術からデザインまで他社への協力は惜しまない」

 ——やはり、事業の中心は酢ですか。

 「健康を気遣うべき30、40代にも酢の効果を伝えていきたい。若い人にとって、おしゃれな感覚で酢をとらえてもらうような提案を考えたい」

 「一つの分野で規模を広げて稼ぐやり方では危ない。動きやすい企業規模を生かして、時流にあった事業を展開する。必要であれば、国内外の企業合併・買収(M&A)も検討したい」

 ——人材育成の仕組みもユニークだとか。

 「営業ノルマは設定しない。プロジェクトのチームが自発的に助け合いながら向上し、成果が出てくる。直接話し合う密なコミュニケーションで、責任ある仕事をするようになる」

 「社員に大学の医学部などで再び学んでもらう人事制度を導入した。現在3人が対象で、うち2人は08年2月には医師国家試験を受ける見込み。専門知識を身につけ、新たな商品の視点を生み出す狙いだ」

 ——食品メーカーとして、安全性の確保も大きな課題ですね。

 「本社工場は、高度な衛生管理の方法HACCPを取得しているが、それだけで安全は保てない。生産現場で、自分の仕事が全体でどんな位置付けか、分かる仕組みを取り入れる必要がある。職場間の異動を多くし、互いの仕事が理解できるようにしている」

http://www.asahi.com/business/update/0328/001.html