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2007年03月28日(水) 00時00分

『あるある問題』で関テレ除名 民放連、苦渋の選択 東京新聞

 関西テレビ制作の情報番組「発掘!あるある大事典2」の捏造(ねつぞう)問題で、日本民間放送連盟(会長・広瀬道貞テレビ朝日会長)が二十七日、関テレに除名という厳しい処分を下した背景には、事態を重く受け止めている放送業界の姿勢をアピールする狙いがあったようだ。ただ番組内容をめぐっての除名処分は今回が初めて。民放連には慎重な判断が求められたが、政治の側から放送業界への規制が強まる中、結論だけを急いだ感は否めない。 (小田克也、安食美智子)

 「(あるある大事典については)長期にわたって(不適切な番組制作が)行われてきた。それは以前から指摘されていたが、(放送局の)経営陣は軽視していた」。広瀬会長は同日、関テレを除名処分とした理由について、こう述べた。

 除名は放送局にとって極めて重い処分。信頼を失ってスポンサーが離れ、収入減につながる恐れがあるからだ。そのため民放連も除名処分については慎重で、過去に一例(1999年、静岡第一テレビ)しかない。

 今回、あえて“伝家の宝刀”を抜いたのは、「放送界の信頼を失墜させた責任は重い」(広瀬会長)との判断に加え、捏造問題の調査委員会から業界としての対応を求められたためだが、こうした表向きの理由のほかに、捏造問題を受けて政治の側から業界への規制圧力が強まる中、自浄能力をアピールする狙いもあったとみられる。

      ◇

 ただ、今回の除名処分決定については、議論が尽くされていないとの受け止め方もある。

 放送業界では今年に入って番組をめぐる不祥事が相次ぎ、テレビ東京の特別番組「今年こそキレイになってやる!」ではタレントの毛細血管と称し、別人の指先の映像を放送。これも「あるある〜」と同じく捏造行為といえるが、なぜテレビ東京は除名処分にならず、関テレはなるのか。「そうした判断基準などの議論が不十分なまま結論だけを急いでいる」(放送関係者)との指摘がある。

 また在京キー局の関係者は、「番組内容をめぐって除名処分になると分かれば、制作現場はミスや不正行為ばかり気にするようになるだろう」と、今後への影響を懸念している。

 実際、関テレの処分を協議した二十七日の民放連の緊急対策委員会でも、出席者から「関テレに重い処分を下すよりも放送界全体の問題としてとらえるべきではないか」と、除名処分に批判的な意見も出ている。

 民放連は今回、番組不祥事→除名処分という前例をつくったといえる。同種の不祥事が起きれば、再び同様の対応を求められる可能性があり、自らを追い込んだといえなくもない。

 「民放連は身内を守っていく組織だった。一番難しい番組問題は議論を避けてきたが、改めなければいけない。そういう決意が出てきた」。広瀬会長は、除名処分を決定した民放連内の議論をこう総括したが、信頼回復のため払った代償は大きいといえそうだ。

■再発防止策を提出

 情報番組「発掘!あるある大事典2」の捏造問題で、関西テレビは二十七日、社外調査委員会による報告書に対する見解と再発防止策をまとめ、総務省近畿総合通信局に報告書を提出した。

 提出後、会見した千草宗一郎社長は「担当プロデューサーから社長まで、それぞれの段階で責任がある」としながらも、「四月中の検証番組の放送と、総務省による行政処分を踏まえた上で、当社の責任を明らかにしたい」と述べ、自身の進退については明言を避けた。

 報告書は、社外調査委の提言を踏まえ、再発防止策として、「コンプライアンス推進室」を設置し、番組制作ガイドラインを制定するほか、有識者らが参加する「関西テレビ再生委員会」(仮称)も設け、五月中をめどに再生案を策定する。同委員会は、科学番組のあり方を検証する番組制作なども議論する。

 社外調査委によって問題が指摘された放送回については「調査の結果を十分に尊重した。否定するところは全くない」とし、「納豆ダイエット」を含め八件の捏造やデータ改ざんを認めた。関テレは二十八日午後十時から訂正放送を行う。

 また、民放連が同日、関テレを除名処分とする方針を決めたことに対し、千草社長は「大変厳粛に真摯(しんし)に受け止めている。かなりの影響が出てくると思う」と述べた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070328/mng_____hog_____000.shtml