記事登録
2007年03月27日(火) 00時00分

まさに弱り目にたたり目…みずほに900億円訴訟波紋ZAKZAK

 【外国人売り】

 80万円台で推移していたみずほの株価は3月12日から下落し始め、14日には前日比2万4000円安の77万8000円と急落。その後も、15日が同7000円安、16日が同1万8000円安とズルズルと値を下げた。

 「3月上旬に、みずほの親密先であるオリコの2007年3月期の連結最終赤字が4500億円規模まで拡大することが判明。みずほは、オリコへの支援で業績の下方修正を迫られるのではないかとの懸念もあったが、それにしても株価の下げ方があまりにも大きかった。市場関係者は、何かとんでもない“爆弾”が飛び出すのではと不気味がっていた」(大手証券幹部)

 その“爆弾”はほどなく判明。海外通信社のロイターが3月15日(日本時間16日)、次のように報じたのだ。

 仏投資銀行のカリヨンが、みずほフィナンシャルグループ(FG)の米国子会社を相手取り、損害賠償請求訴訟をニューヨーク州南部地区連邦地裁に起こした。請求額は損害賠償1億5000万ドルと懲罰的損害6億ドルを合わせて7億5000万ドル(約880億円)。

 みずほの06年3月期の連結最終利益は6499億円。請求額は実にその13%に当たる。

 カリヨンの訴状によると、同社の上級幹部のダグラス・マンソン氏とアレクサンダー・レケダ氏を含む元社員11人が昨年12月8日に突然退社し、その日のうちにみずほFGへの就職に同意した。マンソン氏とレケダ氏は当時、カリヨンの企業秘密にかかわる情報を把握していたが、配下の社員らを伴って退社した後、その情報を不正に利用したという。

 みずほFGに移ったこの社員らは、企業秘密にかかわる情報をもとに、カリヨンがCDO(債務担保証券)関連業務について交渉を行っていた企業の間に割り込み、商材を奪おうとしたと、カリヨンは指摘している。

 人材の引き抜きをはじめとするみずほFG側の「倫理に反する計画」により、カリヨンのCDO関連業務はもはや機能しなくなり、カリヨンの評価を傷つけたとし、懲罰的損害賠償を含む提訴に踏み切ったという。

 日本ではなぜか、巨額の損害賠償請求訴訟なのにクローズアップされていない。

 【みずほの事情】

 みずほFGは昨年、ニューヨーク証券取引所に上場。合わせて、傘下のみずほコーポレート銀行が米国での金融持ち株会社の認可を得て、この4月から米国での本格的な証券業務に参入する計画となっている。

 「欧米の投資銀行から優秀な人材をヘッドハンティングしたのも、米国での証券業務の本格参入を見据えてのこととみられるが、思わぬところでつまずいた格好だ」(在米邦銀関係者)

 市場関係者は「みずほコーポレート銀は、米シティグループによる日興コーディアルグループのTOB(株式公開買い付け)にいの一番に保有株売却の意向を表明した。これは、約300億円の売却益を確保するとともに、カリヨンの提訴に備え、米金融最大手のシティと橋頭堡(きようとうほ)を結んでいる方が得策と考えた可能性がある」と指摘する。

 不正会計問題に揺れる日興の買収合戦で敵対すると思われた、みずほとシティが急接近したのにはこうした背景があったと考えれば、確かにつじつまが合う。

 くしくも、みずほを主取引銀行にするソフトバンクは3月に入り、カリヨン証券などを相手に法的措置をとると発表、日米をまたいだ訴訟合戦の様相を呈している。

 カリヨン証券は2月27日付(日本時間28日付)リポートで、ソフトバンクの会計に疑問を呈するリポートを作成。これに対してソフトバンクは3月6日、「悪意のある極めて悪質なリポート」として、損害賠償を求めて法的措置をとると発表している。

 日本の金融界の雄であるみずほと、仏金融界の雄カリヨンの骨肉の争いは、どんな結末を迎えるのだろうか。

ZAKZAK 2007/03/27

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_03/t2007032724.html