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2007年03月27日(火) 13時25分

飲酒運転事故で息子を失った女性が亡き息子の遺志を継ぎ早稲田大学を卒業しました。フジTV

25日、57歳の女性が早稲田大学を卒業しました。
彼女は、およそ7年前、早稲田大学に入学したばかりの息子を飲酒運転事故で失った交通犯罪被害者でした。
亡き息子の遺志を継いだ、ある遺族の「今」を取材しました。

25日に行われた早稲田大学の卒業式に、鈴木共子さん(57)の姿があった。
2000年4月9日、共子さんの息子・零(れい)さん(当時19)は、友人と家に帰る途中、橋の上で背後から来た飲酒・無免許の暴走車にはねられた。
およそ19メートル下のコンクリートにたたきつけられ、即死だった。
19歳だった1人息子の命を奪った当時30歳の加害者に科せられたのは、懲役5年6カ月の実刑。
共子さんは「息子は帰ってこないのに、加害者はすぐに社会復帰。たった5年で。それは違うだろうと。交通事故じゃなく、『交通事件』、『交通犯罪』なんだと」と語った。
零さんは、念願の早稲田大学に入学した1週間後、一度も授業を受けることなく、この世を去った。
事故当時、零さんが持っていたカメラには、入学式を前に撮影したスーツ姿が写っていた。
刑期を終えた加害者は2005年に出所し、共子さんの元を訪れた。
共子さんは「『あなたが更生していくのを見守りたい、助けたいと』と。すごく善人的、偽善的なことを(加害者に対して)言った。『ひと月に1回は連絡ちょうだいね』って(言ったら)、(加害者は)『はい、わかりました』と言った」と語った。
しかし、加害者が再び共子さんの前に姿を現すことはなく、連絡も取れなくなった。
共子さんは「感情を押し殺さないで、『あんたを殺してやる』とか、『憎い』とか、『(息子を)返して』とか言えばよかった」と語った。
事故後、共子さんは、零さんがノートの切れ端に残した詩を見つけた。
「いつもと同じように僕は起きた いつもと同じように いや違う イツモトオナジキブンで これが正しい (中略) だがどうだ 君たちはいつもと同じだ なんの変化もみせない 僕だけが変わる 進化する」
息子が歩むことのできなかった道を自らが歩むため、共子さんは早稲田大学に入ることを決意した。
3度の受験の末入学した共子さんは、事件事故の現実と命の重みを伝えようと、遺族たちが被害者の等身大パネルや遺品の靴などを展示するアート展「生命のメッセージ展」も開いた。
命の大切さを1人でも多くの人に理解してもらうためだった。
零さんの死からまもなく7年。
共子さんをモデルにした映画「0(ゼロ)からの風」が完成し、先日試写会が行われた。
共子さんを演じた田中好子さんは「役に近づくことが演技だと思っていたんですけど、わたしは鈴木共子さんになりきれた気がしました」と語った。
映画を見た人は「同じ世代だから、自分のことのようにとても感動しました」、「わたしも息子を亡くしたんですけど、共子さんと同じ気持ちで。母親の気持ちがすごく出ていた」と語った。
卒業を迎えた共子さん。
息子の死を受け止め、ゼロからの再出発となった。
共子さんは「やっとお母さんは卒業できた。むしろ息子のほうが、『あなたの人生を生きなさい』って言うだろうなあって。今度は『わたし』を生きていきたい」と語った。
highlow highlow 2007/03/27 13:25

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