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2007年03月27日(火) 00時00分

圧巻の自然とCGで生々しく 大友克洋監督「蟲師」朝日新聞

 大友克洋監督が漆原友紀作の人気マンガを実写映画化した「蟲師(むしし)」が公開中だ。原初の生命体「蟲」が引き起こす怪異を、「蟲師」と呼ばれる主人公が解き明かす。大友監督は「ホラーとも怪談とも違う、静かで淡い味わいの原作にひかれた」と話す。

「蟲師」のギンコ(オダギリジョー)

大友克洋監督

 百年ほど前の日本を思わせる世界。大地や森に様々な蟲が住み、まれに人と接して病をもたらす。旅の蟲師ギンコ(オダギリジョー)は、そんな災厄を癒やすように解きほぐす。彼は、蟲にとりつかれた少女淡幽(蒼井優)の家で、自らの幼時にかかわる蟲の記録に出合う。

 おぼろな蟲の怪異に重ねて、はかない生と別離のドラマが描かれるのが原作の持ち味。映画はCGの蟲が生々しく、物語もやや重い。「生身の役者が演じると、少しホラーっぽくなるのかな。怨念(おんねん)や因縁を強調しないように気をつけましたけど」

 圧巻は、深い森や神秘的な沼といった自然の映像。主に滋賀県で撮影した。ロケ地探しに5カ月をかけ、計5万キロを走破したという。「中世のような雰囲気を探して、まるで探検隊。僕はヒルにかまれ、助監督は底なし沼にハマった。人の手が入っていない森が一番きれいだね。植林して手入れをしていない森は汚い。ひと目で分かります」

 9年がかりでアニメ「スチームボーイ」(04年)を完成させ、実写は「ワールド アパートメント ホラー」(91年)以来ひさしぶり。今も、実写とアニメ両方の企画を準備中という。

 「昔は、実写じゃ(映像化は)無理だからアニメにしたものだった。今はこうして、CGを使って実写で何でもできる。では、アニメをアニメたらしめるものって何だろう、と考える」。デジタル技術をいち早く使い、アニメの新たな表現に挑戦してきたが、「アニメはもう一度、手がきっぽいものに戻るのかもしれないね」。

http://www.asahi.com/culture/movie/TKY200703270347.html