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2007年03月27日(火) 02時14分

雪と海風に備え太い柱・梁 伝統工法、揺れに耐えた朝日新聞

 「耐震性の低い住宅は倒壊するものが多い」とされる震度6強の地震。しかし、今回の能登半島地震では、近年の同程度の地震に比べ、全壊した住宅の数は少なかった。犠牲者が1人にとどまり、大きな火災も起きなかった。なぜ、被害は低く収まったのか。地元特有の強い海風や雪対策のために柱を太くした民家が多かったと指摘する声もある。震災の被害を抑えるために住宅を強くするという基本の大切さが改めて示された。

地震の被害を受けた建物と受けなかった建物が混在する=26日、石川県輪島市門前町で、本社ヘリから

 金沢工業大で木造建築を専門とする研究者4人が26日、被災地の調査に入った。このうち中森勉・助教授(建築史)と永野紳一郎教授(環境工学)が本社ヘリに乗り、震源に近い輪島市門前町などを見た。

 門前町には寺院が多い。あちこちの墓地で、墓石がバラバラな方向に倒れていた。「揺れの方向にそろって倒れると言われるが、このあたりは震源の真上に近く、墓石が跳ね上がったのだろう」と中森助教授。

 重い墓石がはねるほどの揺れが襲った被災地を、同大の後藤正美助教授(木造耐震工学)は車で見回った。今回は過去の震度6強の地震に比べ、全壊した住宅の戸数は少ない。後藤助教授によると、雪が多い奥能登では太い柱や梁(はり)で建てられた家が多い。それが被害を少なくしたようだという。

 門前町の木工所経営、松山勇さん(76)の木造2階建ての自宅はびくともしなかった。家には黒光りする14センチ四方の柱。「頑丈な木で、太い柱にしたから激しい揺れに耐えられた」

 11月から春先、日本海から地元で「あえの風」と呼ぶ強い海風が吹く。市文化財保護審議会の男性(72)によると、強風にも備え、伝統的に家の柱や梁は太く頑丈だ。「建物の強度を上げるため、窓も少ない」

 ただ、全壊した戸数は少ないが、「鳥取県西部地震に比べ、1階が完全につぶれた家が目立つ」と後藤さん。1階を店舗や車庫に使い、壁が少ない家屋だ。

 後藤さんは明暗をわけた理由を探ろうと、倒れなかった家屋に注目。「柱の太さか壁の強さか。それとも長い間の維持管理や補修が老朽化の進み具合に影響したのか」。住宅の強さの差が見えるだろうと、倒壊を免れた家屋を調べる考えだ。

http://www.asahi.com/national/update/0326/OSK200703260182.html