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2007年03月26日(月) 12時36分

お年寄り、不安と疲れ 輪島の避難所 能登半島地震朝日新聞

 能登半島地震の被災地では、余震におびえながら多数の住民が公民館や学校の体育館で一夜を明かした。石川県輪島市門前町の諸岡公民館には一時約500人もの住民が避難し、約半数がここで朝を迎えた。眠れないまま、肩を寄せ合い小声で話し込み朝を迎えたお年寄りたち。自宅の被害状況、そして今後の暮らしに不安を募らせる。

諸岡公民館

野外で炊き出したみそ汁を部屋にいる避難者に配っていく=26日午前6時57分、石川県輪島市門前町道下の諸岡公民館で

一夜を過ごした避難所から寝具を抱えて帰宅する女性=26日午前6時50分、石川県輪島市門前町鹿磯で

 公民館の和室2部屋と1階フロアの計約270平方メートルに、約250人の住民がひしめく。大半が65歳以上のお年寄りだ。畳1枚分のスペースを数人で分け合う。

 室内には石油ストーブが設置され、人いきれもあって室温は20度超。「暑い」「気が高ぶってしまって寝付けない」と声がもれる。

 26日午前0時、玄関前にNTTの災害用の臨時電話3台が設置されたが、利用する人の姿はない。午前2時過ぎ、ぼそぼそとした話し声が続くなか、照明が次第に落とされた。「余震が起きるとパニックになるので、真っ暗にはできません」と公民館関係者。

 妻(65)や高齢の母親とともに避難していた山本明さん(73)は、1年前に自宅を新築したばかりだった。高齢者ばかりの3人暮らしに不安を感じて避難してきた。「大勢いると助け合えると思ってやってきました」

 両ひざに手術して金属を埋め込んでいるため、立つにも座るにも時間がかかり、公民館ではいすに座っている時間が長くなる。「自分より年をとった人に横になってほしいので、車の中にでも寝ます」とつぶやいた。

 時折、余震でユサユサと建物が揺れるたびに、ざわめきが起こる。午前3時前、数種類の新聞朝刊が運び込まれた。薄暗いなかで、食い入るように地震の記事に目を落とす住民の姿が目立つ。

 自営業関勲さん(59)は、名古屋市で働く20代の娘に「これから先のことは分からないけど、家はつぶれてしまった」と電話で伝えた。娘の会社の上司は、「早く家に帰ってあげなさい」とすすめてくれているという。でも、関さんは迷っている。「寝るところもないし、来てもらっても」

 午前5時半。ゆっくりと明るさを増した。お年寄りたちが外に出て、低い鉛色の雲がたれこめた空を眺めた。間もなく、また震度4の余震が襲った。

 避難所では、医師や看護師らで作る日本赤十字の医療班が待機して体調の悪い人の治療に当たった。25日夕から26日朝にかけて、高血圧ややけどなどで20人ほどの高齢者が診察を受けた。

http://www.asahi.com/national/update/0326/OSK200703260092.html