今回、地震の揺れをいち早くキャッチできたのは、先行的に情報提供を受けている一部の機関に限られる。それでも9月をめどに、震度5弱以上の揺れが想定される場合に緊急地震速報を流す計画を進めている同庁が、大きな地震で情報を出したのは初めてだ。「震源のすぐ近くでは間に合わないが、早く出せる所には出して減災につなげたい」という。
こうした予測を可能にしたのは、「ナウキャスト地震計」と呼ばれる新たなシステムだ。地震が発生するとP波(秒速約7キロ)と呼ばれる初期微動が届き、その後、大きな揺れをもたらすS波(同約4キロ)が到達する。震源に近い地震計でP波をとらえ、地震の規模や到達時間を予測できるようにした。
その結果、気象庁は地震発生から約1分40秒後に津波注意報を出した。これまでは最も早くても4分。新システムで2分以上縮めた。
同庁はこの地震計を全国220カ所に整備し、昨年10月から津波予報に活用できるように備えた。津波到達までの時間がない沿岸の地震に有効とされ、今回初めて成功した。
新システムは、83年の日本海中部地震(死者・不明者104人)、93年の北海道南西沖地震(同230人)で、津波情報前に大津波が押し寄せ、大きな被害を出したことを教訓に整備された。
緊急地震速報は、9月をめどにテレビや防災行政無線を通じて国民に伝えられる。気象庁は昨年8月から、鉄道や病院など約400機関に先行的に情報提供を始めた。
今回、気象庁が最初の予測を出したのは、P波を検知してから3.6秒後。住民は、情報を受け取った場合にどうすればいいのか。身構えたり、ラジオで聞いたドライバーはハザードランプを出して後方車に注意を知らせたりすることは可能なのか。斎藤誠・即時地震情報調整官は「5秒あれば何ができるかを周知していきたい」と話す。
http://www.asahi.com/national/update/0326/TKY200703260005.html