幕開けの「ベリーベリーストロング」は作家の伊坂幸太郎との「共作」だが、手法がちょっと変わっている。斉藤のファンだという伊坂がアルバムのために、まず短編小説を書き下ろし、それを元に斉藤が詞を書きあげた。都会の雑踏で出会った男女の会話やしぐさを、まくしたてる歌唱になるまで言葉を詰め込み、躍動する演奏に乗せた。
「入れたい場面がいっぱいあって、20番くらいまでできそうだった」
アルバムのきっかけは、他人に初めて詞を提供してもらったCM曲「ウエディング・ソング」。コピーライターの一倉宏が詞をつけ、アルバムの最後に置いた。それまで自作自演にこだわりがあったが、この曲の制作過程が新鮮だった。
「いつもは曲が先行するが、詞を見ながら、ギターなど持たずに鼻歌でまずメロディーをつけた。ギターを弾くと、手クセでよく使うコードが自然に出てしまうけど、今回は言葉に呼ばれるメロディーになった」
アルバムには他に、〈ジャンガランガ〉というフレーズが耳に残る森雪之丞の作詞曲や、〈メールしても返信がない〉といった、今どきの言葉で日本語詞をつけたジョン・レノンの「ジェラス・ガイ」、「スローなブギにしてくれ」「真夏の果実」のカバーなど。恋愛の様々な状況を歌う曲を選び、出会いから結婚に至るまで、物語性のある流れを作り上げた。
全編ラブソングにしたのは初めて。「こっ恥ずかしいところもあるけれど、ほれたはれたを正面きってやるのもロックなんだなあ、と思いました」