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2007年03月26日(月) 00時00分

「ギロチン」10年 漁師ら報告会朝日新聞

 ◆「ヘドロ堆積し貝死んだ」「潮の出入りで海回復可」

 諫早湾が干拓事業の潮受け堤防で閉め切られてから10年。有明海に何が起きているかを話し合う「漁民のしゃべり場」が25日、諫早市の長田みのり会館であった。県内や佐賀県の漁業者7人が、約50人の市民を前に、海の異変を口々に指摘。「排水門を開けば、まだ有明海には再生力がある」と、中長期開門調査の必要性を改めて訴えた。

  ・中長期開門調査 改めて求める声/諫早

 「漁民のしゃべり場」は長崎大の田北徹名誉教授や姫野順一教授らが企画した。

 田北名誉教授は「有明海には産卵場所と稚魚が育つ場所がある。稚魚は微妙な流れに乗って生育場所にたどり着く。本明川河口が失われたことで、資源がなくなるのは自然」と干拓事業の影響の大きさを指摘した。

 諫早市の小長井漁協の松永秀則さん(53)は「工事後、ヘドロが堆積(たいせき)し、小長井のタイラギが死んだ。その後、佐賀、福岡、熊本の順にとれなくなった」と異変の広がりを話した。
 同漁協の土井修さん(52)は「潮受け堤防の閉めきり前は、定置網漁の漁獲量は、船からこぼれるほどだった」と、かつての有明海の様子を振り返り、水揚げや収入が以前の10分の1に減っている現状を説明した。
 佐賀の漁業者も「夏にとれていたクルマエビがいなくなったので、アルバイトでしのいでいる」と、窮状を明かした。
 島原漁協の吉田訓啓さん(42)は、海の異変を指摘したうえで「有明海の再生力は大きい。(調整池に)潮を出入りさせれば、回復する」と、開門調査の必要性などを強調した。

 02年の短期開門調査の後、アサリなどの生息状況に、改善がみられたことも報告され、姫野教授は「有明海を回復させるため、漁業者が手を結ぶ必要がある」と、再生に向けた漁業者の結束を呼びかけた。

http://mytown.asahi.com/nagasaki/news.php?k_id=43000000703260003