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2007年03月26日(月) 00時00分

入札改革/県土木建築部長に聞く朝日新聞

 全国各地で相次いだ官製談合事件を受けて、大分県が示した入札改革は、談合の温床とされる指名競争入札を徐々に制限する一方で、地元業者への配慮も厚くする内容だ。指名競争入札を一気に廃止する自治体もあるなか、県の手法は思い切った方策は避けた緩やかなものだ。地元業者への配慮は、「一般競争入札を有名無実化する」との批判もある。今回の「改革」の趣旨や狙いなどについて、県土木建築部の妹尾忠幸部長(58)に話を聞いた。(山本亮介)

 ——入札改革に取り組んだ目的は。

 「税金の詐取である談合を防止するためだ。一般競争入札の対象を拡大し、公平、公正な競争に努める。結果として落札率(予定価格に対する落札価格の割合)が下がるかもしれないが、それ自体が目的ではない」

 ——指名競争入札を全廃した自治体もある。県の改革は、あまりに緩やかでは。

 「指名競争入札を廃止するなどの極端なやり方では、行き過ぎた競争を招き、地方の業者が生き残れない。災害の多い大分県にとって、県民の安全を守るためには、地域を熟知した地元業者の一定の確保が必要だ」

 「建設業は雇用の多くも占めている。大分は九州7県でその割合が最も高い。働く場がなければ、過疎化は進む一方。都市にしか住めない社会でいいのか」

 ——競争で淘汰(とう・た)が進む業界もある。建設業だけを優遇し過ぎてないか。

 「大雨による通行止めや落石に、一番最初に対応するのは地元業者。災害危険個所が全国でも5番目に多い大分で、県民の生命を守る業者をゼロにしていいのか。県発注の公共工事額が5年で4割減と厳しい状況下で、一生懸命やっている業者に光を当てないのは問題だ。過保護ではない」

 ——入札への参加を地元業者に限る新設の「地域要件」で、「20社以上」という制限では、どの業者が入札に参加するのかが業者間で共有できてしまい、指名競争入札と変わらなくなってしまうのでは。

 「04年度から予定価格1億円以上の工事で一般競争入札を導入しているが、その際、同じ20社以上の条件を設け、公平性が担保されていると思っている」

 ——何を見極めたうえで、一般競争入札の対象を段階的に拡大していくのか。

 「過当競争により、地域に無用な混乱がもたらされていないかを見ていく。具体的には、地元の業者で地元の工事が落札できているかどうかだ」

 ——それでは、談合はなくならないのでは。

 「災害が多く、建設業界で働く人が多い大分県にとって、最も望ましいやり方は何なのか模索した結果だ。もちろん先進的な自治体の事例も検証しながら、必要であれば見直しもしていく」

 ——オンブズマンの試算では、05年度に最も落札率が低かった長野県(74・8%)なみに、大分県の落札率が下がったとすると、約27億円の節約が可能だ。

 「大分県も同年度の一般競争入札の落札率は85・9%と、そう高い方ではない。また、極端な改革をした県でも制度を変更し、落札率も上昇している。行き過ぎたと感じているから、戻している証拠だ。そもそも、都道府県によって理想の入札制度は異なるはずだ」

 ——「改革」は談合を完全に防止するのが狙いなのか。それとも、多少談合する余地が残ったとしても、災害に対応できる地域を維持することの方を優先するのか。

 「両方だ。ただ、一般競争入札の拡大も、どこまで踏み込んでいいのかの見極めは本当に難しい。どちらかに特化するなら悩まずに済むが、相反することも両立しようとしている。大分にとって一番いい形は何なのか、他の自治体の取り組みを検証しながら、運用していきたい」

 ◆大分県の入札改革 

 現行1億円以上の工事を対象にした一般競争入札を、今年7月から5千万円以上で導入。09年度までに段階的に1千万円以上に拡大する。1千万円以下については未定。一方で、地元の業者に配慮し、入札の参加を工事現場の土木事務所管内に本社がある業者に限る。管内の参加者が20社未満になった場合は、隣接する市町村内の業者も参加できるようにする。

 また、談合に関与した場合の罰則も強化。談合情報が寄せられた際の対応も改め、情報通りの結果となった場合、その入札に参加した業者を再入札で排除する。

http://mytown.asahi.com/oita/news.php?k_id=45000000703260004