記事登録
2007年03月25日(日) 12時00分

音楽配信とCD、新聞には載らないマーケットの実像オリコン

 日本レコード協会が発表した2006年の『有料音楽配信売上実績』では、その総額がシングルCDの市場規模を上回り、それが一般メディアでも大きく報じられた。その影に隠れてしまった感もあるが、長年低迷していたシングルCDも一方で7年ぶりとなる前年比増となっている。

 協会の2月の発表によると、有料音楽配信売上実績の06年通年では、金額で前年比156%となる534.8億円と大きな伸びを示しているが、レコード生産実績における06年通期のシングルCDの実績は508.5億円。有料音楽配信売上実績には一部アルバム単位でのダウンロードによるものや映像作品などが含まれるため、単純な比較はできないものの、通年での実績額全体としては初めてシングルCDを上回っている( 詳細はこちら )。

 これがクローズアップされて、新聞各紙等で大きく報じられたわけだが、音楽配信の急伸ぶりが上回ったとはいうものの、一方のシングルCDの生産実績自体、金額ベースで99年以来7年ぶりに前年比増(104%)となっている。

 かつては「シングルCD市場が配信市場にとってかわられる」という懸念の声も聞かれたが、シングルCD市場の低迷が始まったのが90年代後半であるのに対し、着うた配信がスタートしたのは02年12月。シングルCDの市場縮小はむしろこの時点から鈍化しており、着うた等の市場が従来のシングルCD市場にプラスオンするかたちで伸び、かつ両者ともに市場規模を広げた06年は、着うた等とシングルCDが互いに相乗効果をあげ始めた年だったと言えるかもしれない。
 それを前提に見てみれば、配信とCDとを合わせた06年の「シングル」市場規模は1043.3億円。奇しくも、シングルCDにおける市場規模のピークだった96年の1044.2億円とほぼ並んだと言えるだろう。

 しかし、そのヒットの中身については、配信でもCDでも大きなセールスをあげるシングル作品もあれば、そのどちらかが突出して売れている作品もありと、まさに千差万別だ。一口に「配信」と言っても、着うたと着うたフルとの市場の比率自体が大きく変わりつつある只中にあり、着うたでのヒット作品と着うたフルでのヒット作品にも微妙な差異があることも興味深い。
 一つのプロダクト全体をヒットさせるための呼び水の役割を果たすものが「シングル」であると定義付けるなら、まさにそれが復権し、かつプラットフォームが複数にわたるようになったことで、「シングルヒット」のあり様もかつてとはまた違ったものになりつつあるようだ。

  音楽配信とCDマーケット事情の詳細 はこちらへ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070323-00000028-oric-ent