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2007年03月25日(日) 03時14分

加ト吉、グループ内で伝票上だけの「循環取引」?読売新聞

 東証1部上場の冷凍食品大手「加ト吉」(本社・香川県観音寺市)グループを巡り、複数の取引先企業が加わって実際には商品を動かさず伝票上だけで売買する「循環取引」が繰り返されていた疑いが、関係者の証言で明らかになった。

 少なくとも3年以上前から続き、昨年末に中止されたという。うち1社は年間の取引額を「200億円」と証言。上場企業の加ト吉の場合、売上高が粉飾されるなどして決算と実態が異なれば、有価証券報告書の虚偽記載を禁じた証券取引法上の問題も浮上する。加ト吉は社内に調査委員会を設置して調べている。

 関係者の証言を総合すると、伝票上の取引として、大阪市の中堅商社が、香川県の貿易会社から冷凍クリや健康食品などの商品を仕入れ、加ト吉や子会社の「加ト吉水産」(本社・観音寺市)に販売。加ト吉側から兵庫県や岡山県の食品販売会社などの順に転売され、さらに、もともとの仕入れ先の香川県の貿易会社に転売された。この間、商品は神戸市の倉庫会社で保管されたまま出荷されず、売買の度に名義変更だけが繰り返されたという。

 同商社関係者の話では、取引は香川県の貿易会社から持ちかけられ、2003年5月から始まった。加ト吉と加ト吉水産に昨年1年間に200億円分を販売した、としている。仕入れ値の1%程度を上乗せして販売しており、利益は約2億円。取引実態についてこの関係者は「商品は実在し、架空取引とは思っていない」と主張している。

 仕入れの際、自社の手形を振り出し、加ト吉側からは現金で支払いを受けていた。取引中止は、加ト吉側の意向だったという。

 加ト吉から商品を購入する側の食品販売会社関係者は「香川県の貿易会社役員から指示を受けて売り買いし、手形をやり取りしていた。倉庫での名義変更手続きも役員に任せていた。本業には必要なく、架空取引と言われても仕方がない」と証言した。

 別の食品販売会社は、自転車操業的に手形を決済していたとし、取引中止で不渡りになり、億単位の負債を抱えているという。同社関係者も「貿易会社役員の指示に従った」と話した。

 貿易会社は十数年前から加ト吉と取引があり、問題の取引では、その役員が中心的な役割をしていたとみられる。役員は読売新聞の再三の取材申し込みに応じていない。

 他に、近畿、中国、四国などの中小企業のべ十数社がかかわっていた、との証言もある。

 加ト吉の島田稔専務はこれまで1月と2月の2回、読売新聞の取材に対し、事実関係を全面否定していたが、24日の取材で、「結果的に循環取引になっていたかもしれない」と、加ト吉グループが不明朗な取引にかかわっていた可能性があることを認めた。同社は2月に社内調査委を設置して調査を進め、外部の弁護士や公認会計士らに調査結果の精査などを依頼しているという。調査の詳細は明らかにしなかった。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070325i201.htm?from=main2