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2007年03月25日(日) 00時00分

事務所にも思惑・個性朝日新聞

 知事選3日目の24日、主な候補5人の選挙事務所を訪ねて回った。どこに、どのような事務所を構えたのかを見ると、それぞれの候補のスタイルや、選挙への思いがにじみ出ているようでもある。
(松村康史)

 共産党推薦の吉田万三氏の事務所は、浜松町駅の近くにある。労組の機関紙などを印刷する会社のビルの2階。「都心部で、良心的な家賃で貸してもらえたから」という。「必勝」の赤い旗もあるが、模造紙に本人の柔和そうな似顔絵を描いた寄せ書きが、いくつも壁に張られていた。

 隣の新橋駅前には、石原慎太郎氏の事務所。便利で人通りが多い所を探した結果、68年に初めて参院選に出た時と近い場所になった。陣営では「初心に戻る気持ちと、『東京再起動。』というキャッチフレーズに合致した」と話す。ビル1階の元紳士服店。団体の推薦状などは、一切張られていなかった。

 浅野史郎氏は「都庁の足元から変革しよう」と、新宿駅西口に事務所を設けた。林立する超高層ビルとは対照的な、小さな元不動産屋の建物を借りた。シンボルカラーの青いカンパ箱があり、壁にも青いメッセージカードが張られている。慶大で浅野ゼミの一員だという学生が来て、ボランティアカードに記入していた。

 黒川紀章氏の選対本部は、普段の建築設計事務所の会議室だ。警備が厳しい赤坂のアーク森ビルにあるため、事前に電話して「入館登録」をしないと入れない。陣営は「銀座辺りで探したが見つからなかった」と説明する。

 世田谷区下馬の住宅街で、ひときわどっしりと見える「ドクター・中松ハウス」。自宅と研究所などがある場所を、ドクター・中松氏は選挙事務所として届け出た。本人は「商業主義的でなく、自宅で地味にやる」。

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 都選管によると、都知事選では3カ所まで選挙事務所を置くことができる。候補者14人のうち、事務所を届け出たのは10人で、うち4人は自宅と同じ住所になっている。

■春せんきょの気分 芝浦アイランド

 JR田町駅から海側に歩くこと8分。運河に囲まれた広さ11ヘクタールの埋め立て地に着く。「芝浦アイランド」。24日、島びらきの記念式典があった。

 都電・都バスの車両工場跡地などに高層マンション4棟(計3827戸)が建つ。すでに2棟で入居が始まり、人口約400人の島は1万人のまちに変わる。

 「まだオフィスの中で生活しているようで人の交流もない」。生後4カ月の女の子をベビーカーに乗せた買い物途中の主婦(34)。2月に島南端の48階建て棟に引っ越してきた。大手メーカーに共稼ぎ。会社に近くて価格も割安だった。

 部屋からは、羽田空港に離着陸する飛行機や島べりを走るモノレール、運河を行き交う船が間近に見える。「まるで交通博物館。男の子なら大喜びするのになあ」

 だが2人目は尻込みする。「1人育てるのに教育費が2千万円かかるというし、親に金があるとないとでは差が出るのも現実だし」

 都知事選の候補者に女性は1人。「子育て支援を本気で考えている候補者がいるように思えない」
(上林格)

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000703260003