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2007年03月25日(日) 21時30分

英、奴隷貿易禁止から200年 市民が「鎖の行進」朝日新聞

 英議会で奴隷貿易を禁止する法律が成立してから25日で200周年。奴隷の苦しみを追体験する「鎖の行進」などの記念行事が各地で開かれた。政府も「現代の奴隷制」とされる人身売買の規制に乗り出すなど、官民一体となった取り組みが始まっている。

 「私たち白人は、あなた方の手で鎖につながれることで、アフリカで何があったのかを感じたいのです」

 ロンドン郊外の学校で23日、「鎖の行進」を率いるキリスト教系団体のデービッド・ポットさん(60)は約80人の黒人の子どもたちに語りかけた。

 鎖の行進が、奴隷貿易禁止法成立の立役者とされるウィリアム・ウィルバーフォース議員の出身地のイングランド地方北部ハルを出発したのは今月1日。奴隷の中継地だったロンドンまでの約400キロを歩き続けた。

 行進に参加したカリブ海・仏領マルティニク出身のモネット・タパ・ネコモウさん(43)は「黒い肌は隷属の印ではありません。我々が誇るべき歴史のあかしなのです」。子どもたちから拍手がわいた。

 奴隷制への批判が高まる中、ブレア英首相は昨年11月、英紙に投稿し、「(奴隷制を)深く恥じる」と遺憾の意を表明。今月7日、訪英したガーナのクフォー大統領との共同記者会見で「改めて申し訳なかった」と謝罪した。

 鎖の行進などの取り組みは、急速に広がる人身売買にも光を当てる。英内務省は03年、少なくとも外国人女性4000人が英国内の性産業に売り渡されたと推計。5年後のロンドン五輪が人身売買を加速させるとの懸念も出ている。

 内務省は23日、暴力団などが仲介する売春や他の低賃金労働を「現代の奴隷制」と位置づけ、厳しく取り締まるための新たな行動計画をまとめた。

http://www.asahi.com/international/update/0325/013.html