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2007年03月24日(土) 06時17分

公取委、新生銀行に排除命令へ 広告で不当表示 業界初朝日新聞

 新生銀行の金融商品のチラシで、実態より有利にみせかけて消費者を誤認させる「不当表示」があったとして、公正取引委員会が景品表示法違反に基づく排除命令を出す方針を固めたことがわかった。銀行に対して、同法違反で排除命令が出されるのは初めて。公取委には、有利な面を強調した広告を多用する銀行業界への警鐘とする狙いがあるとみられる。

問題となった新生銀行の「パワード定期プラス」のチラシ。目立つ中央部に高い金利が表示されている

二重通貨預金とほかの預金との比較

 不当表示とみられているのは、新生銀が昨年8月から10月中旬にかけて使っていた「パワード定期プラス」という定期預金のチラシ。「二重通貨預金」と呼ばれるデリバティブ(金融派生商品)の一種で、通常の定期預金よりは高金利。為替動向によって元本を円で受け取ったり、米ドルで受け取ったりする。

 預入時に基準となる為替レートが予約され、満期時にそれより円安だと元本を円のままで、円高だと基準レートでドルに両替されて受け取る。円高が進むと為替差損が広がるため、円に換算すると元本割れしてしまう可能性が高い。

 基準レートは「預入時の為替レートと同じ水準」「その水準から5円円高」「7円50銭円高」「10円円高」の4種類。基準レートが円高に設定されるほど、ドルで受け取って為替差損を被る可能性は低くなるが、金利は下がる。

 問題のチラシでは、目立つ中央部に当時最も高い金利の「年3.19%(3年もの)」だけを表示。ほかの三つの基準レートを選んだ場合に適用される低い金利を表示していなかった。「10円円高」を基準レートとして選んだ場合は年1.31%だった。

 公正取引委員会は、03年に日本生命のがん保険のパンフレットについて、不当表示で排除命令を出した。不当表示の問題で、銀行に対して、より軽い「警告」を出したことはあるが、排除命令は例がない。

 金融庁も、デリバティブを組み込んだ複雑な預金の顧客への説明体制について監督を強化する方針。新生銀に対しても報告を求める。

 新生銀は昨年10月下旬にチラシを改訂し、現在のチラシでは低い金利例も表示されている。同行広報部は、今回の問題について「コメントするのは差し控えたい」としている。問題となった「パワード定期プラス」の預金量は公表していない。

http://www.asahi.com/business/update/0324/004.html