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2007年03月24日(土) 00時00分

出馬予定者「反対」 有権者は半信半疑朝日新聞

 ◆離島の処分場誘致問題

 景気の低迷に苦しむ県内の離島で、放射性廃棄物処分場を受け入れようとする動きが出始めている。だが、経済効果と引き換えに、迷惑施設を誘致することには住民の反対も根強い。賛否が割れる問題を、県議選の立候補予定者たちはどう取り上げているのか。

  「約束守る県議 選びたい」

 新上五島町で9日、住民が企画した立候補予定者の公開討論会があった。南松浦郡区(定数1)から立候補を予定している5人が出席。高レベル放射性廃棄物最終処分場を誘致することの是非も話題に上った。
 「島の将来を閉ざす施設には反対」「この自然を子孫に残す義務がある」。5人はそろって反対の姿勢を鮮明にした。
 以前、施設誘致についての勉強会を開いた自民公認の浜田新一氏も「どんな施設かと思い勉強したが、安全性の面からも今は反対」と力説した。
 浜田氏は事務所の前に「誘致反対」の看板を掲げている。陣営幹部は言う。「誘致派と見られれば大きな痛手。憶測が飛び交うので、立場を明確に示したかった」

 処分場誘致の問題が持ち上がったのは2年ほど前。同町出身の東大名誉教授が理事長を務める東京のNPOと、浜田氏が代表を務めるNPOが中心になって勉強会を開き、青森県六ケ所村の核燃料再処理施設も視察した。
 処分場の候補地は、原子力発電環境整備機構が全国の自治体に公募している。調査に応じれば、年間最大20億円の交付金が期待できる。約400億円もの地方債残高を抱える新上五島町では、活性化の特効薬と期待する住民も少なくない。
 応募権限を持つ井上俊昭町長は一貫して反対の姿勢を崩していないが、今の経済状況が続けば、いつまた誘致運動が息を吹き返すか分からない。そんな不安を漏らす住民も多い。
 その時、県議はどう動くのか。反対派の60代の男性は話す。「今は全員が反対しているが、選挙後はどうなるかわからない。今のうちに、しっかり見極めなければ」
     ◇
 定数1に対し3人が立候補を予定している壱岐市区では、島の中央部に産業廃棄物処分場の計画が持ち上がっている。
 昨年5月、経営に行き詰まった市内の砕石会社の土地を、福岡市の産廃関連会社が引き継いだのがきっかけだった。
 予定地の近くを流れる川の下流には水道水の取水場がある。昨秋、反対する住民団体が署名活動を始めると、中学生以上の市民の8割にあたる2万3千人分の反対署名が1カ月で集まった。
 会社側は昨年10月、市役所を訪れ、計画凍結を表明した。だが、島内には、処分場建設工事などの経済効果を期待する住民もいる。
 「推進派」とみられている建設会社からの支援を受ける立候補予定者は「一部の支援者の声だけを聞くわけではない」と、反対の立場を強調。早くから反対の立場を明確にしていた2人の予定者も「3人とも反対しているので、争点にしようがない」などとし、この問題を積極的には取り上げていない。
 だが、島内では処分場問題をからめて、立候補予定者を攻撃する様々な文書が飛び交っている。
 反対運動に取り組んできた住民の目は冷ややかだ。署名に応じた50代の男性はこう話す。「私たちが反対したから、みんな反対と言っているだけではないか。きちんと約束を守ってくれる人かどうか。住民はそこを見ている」

http://mytown.asahi.com/nagasaki/news.php?k_id=43000000703240003