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2007年03月24日(土) 19時22分

自殺、減らしたい… 若手経営者がネットやチラシ活用朝日新聞

 年間3万人を超える自殺者数を減らしたいと、若手経営者が協働型キャンペーンを始めた。自殺の原因となる「いじめ」「借金」などの解決方法を紹介した無料チラシを街で配る。チラシを読んだ人にアイデアがあれば電子メールなどで寄せてもらう。それを再びチラシに書いて配る……。生きるための知恵を出しあい、手から手へ、人から人へと広げる試みだ。

キャンペーンでの企画について、休日返上で学生との協議に熱を込めるオキタリュウイチさん(右端)=21日、東京都渋谷区神泉町で

 企画したのは、商品開発などを手がける東京都渋谷区神泉町のコンサル会社を経営するオキタリュウイチ(本名・谷口龍司)さん(30)。福祉や教育など社会的な課題を解決するための事業をめざす「社会起業家」の一人だ。98〜99年には女子高生らの間で約15万冊が売れた「ヘブンズパスポート」を仕掛けた。善いことをするたびにシールを張り、100枚集まると願い事がかなうという手帳で、女子高生はゴミ拾いや電車で席を譲るなどの善行に励んだ。

 オキタさんは今回のキャンペーンでも同種の効果を考えた。チラシが勝手にコピーされ次々と手渡され、自殺を考えるほど追い込まれた人たちに役立つ情報が、口コミで自己増殖的に広がっていく。多くの人がブログなどで言及することで、ネット空間にも情報が集積される。そんなネット時代らしい「知の共有や更新」を狙う。1年半後、自殺者数が3分の1以下に減っていることが目標だ。

 チラシはその名も「生きテク」。自殺を考えた人がどうやって自殺を回避できたのか、借金、家庭内暴力、いじめ、うつなどの困難や問題をどのように解決したのか、具体的な方法やノウハウを集めて紹介していく。

 30日午前から東京・渋谷などで配布を開始する創刊号は問題解決の方法募集を告知しつつ、「あなたの笑顔はあなたのまわりにいる1000人を幸せにする力があります」といったメッセージや、日常生活で起きたらうれしいことなどを掲載。5万枚印刷した。2号以降も、月1回程度、発行していく予定だ。

 キャンペーンには社会貢献のサークル活動をしている大学生らも参加。企業協賛などの道も検討する。

 人が死を選ぼうとするほど苦しんでいる状況にどこまで寄り添うことができるのか。重い課題なのに方法が「軽すぎる」ようにもみえる。「批判は覚悟しています。でも動き出さなければ何も変わらない」とオキタさんは強調する。具体的な自殺のケースについて取材もするつもりだ。

 厚労省の調査では、自殺した人の数は、03年から3年連続で3万人を超えており、05年は3万553人。キャンペーンのメールアドレスはinfo@posi−media.net

http://www.asahi.com/national/update/0324/TKY200703240288.html