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2007年03月23日(金) 00時00分

マブチ事件判決 「一攫千金」に厳罰朝日新聞

 金のために殺人もいとわぬ被告と、自宅で突然、命を奪われた何の落ち度もない4人の被害者——その落差をうめるかのように、千葉地裁は22日、小田島鉄男被告(63)に対し、マブチモーター会長宅など3件の強盗殺人事件を主導したとして死刑判決を言い渡した。事件から5年あまり。守田克実被告(56)が控訴していることもあり、遺族からは、両被告が判決を受け止めるよう願う声が上がった。

 午後1時33分、小田島被告はグレーの作業着風の姿で入廷した。主文は後回し。うつむいたままだったこれまでの公判とは対照的に、両手をひざの上に乗せ、3件4人の強盗殺人を次々と認定する裁判長を見つめた。

 根本渉裁判長は冒頭、小田島被告が親族の家庭を転々とし、貧しい生活を送った「不遇な成育歴」に触れた。だが、事件の動機や経緯については「一獲千金を狙い、強取金で海外で楽に生活しようなどという思惑で犯行に及んだ」と指摘。「極めて自己中心的かつ利欲的だ」と述べた。

 判決によると、小田島被告は出所から1カ月あまりで、同房だった守田被告と3件の強盗殺人を引き起こした。その後も逮捕されるまで空き巣狙いを繰り返した。

 「贖罪(しょく・ざい)の場である刑務所において、更生を図り内省を深めるどころか、(証拠隠滅のために被害者を)殺害し、放火する計画まで立てた。規範意識の欠如は甚だしい」と述べた。

 さらに判決は「家族と共に幸福な生活を送っていたにもかかわらず、最も安全であるべき自宅において突然襲われた」として、被害者側に何ら落ち度がないことを強調した。

 約40分後。裁判長に起立を促された小田島被告に金子好一弁護士(62)が寄り添い、手をつないだ。

 「死刑に処する」と裁判長。

 「またな」と声をかけた金子弁護士に小田島被告はうなずき、退廷した。

 判決後、馬渕隆一会長の義弟で、「事件の捜査に協力する会」会長の大西明さん(73)は「もっともな判決だと思っている」と語った。公判での被告の様子からは、改悛(かい・しゅん)の情が感じられなかったという。「反省しているのなら、控訴していたずらに時間を費やすことなく、人間性の片鱗(へん・りん)を見せて欲しい」と願った。

 逮捕まで約3年3カ月。事件を解決へと大きく導いたのが、遺族らがかけた「最高1千万円」の懸賞金だった。

 協力する会によると、捜査本部に寄せられる情報が減り、捜査が暗礁に乗り上げていた04年8月。「このままでは世田谷の(一家4人)殺人事件のようになる」と恐れた遺族らが県警に相談し、同会を発足した。ポスター約40万枚を作成するなどして、情報提供を呼びかけたことがきっかけで、後に250万円ずつを支払った4人から、逮捕に結びつく有力な情報が寄せられたという。

 「(情報は)必ずしも正義感で提供されるものではない」と捜査の難しさも感じたという。「被害者の遺族関係者は金銭的に恵まれている人とは限らない。社会の公平性を保ちながら事件解決を図る手段として、公費による懸賞金を期待したい」と訴えている。

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000000703230001