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2007年03月23日(金) 00時00分

春の選択 統一地方選 ギインめざせ団塊編朝日新聞

 22日告示の13都道県知事選を皮切りに、春の統一地方選がスタートした。北海道夕張市の破綻(はたん)に象徴される地方財政の悪化や、議員に支給される政務調査費の使途の乱脈ぶりに注目が集まるなか、政治の世界と縁がなかった市民が選挙に挑むケースも増えている。退職した団塊世代が、地域社会と行政を結ぶ議員をめざす動きを追った。

 4月の高槻市議選に向け、立候補の準備を進める浅原敬司(ひろし)さん(63)を支えるのは、8年前に果たした「地域デビュー」で知り合った仲間たちだ。

 松下電器の営業マンとして、帰宅がいつも午後11時を過ぎる仕事人間だった。だが、役職定年が迫った55歳のとき、妻や近所の人に勧められ、町内の自治会長になって、地域とのかかわりが深まったのが大きな転機になった。

 「野良猫がどんどん増えている」「犬のふんを何とかして」。次々と寄せられる相談やトラブルに初めはとまどった。が、「ご近所のお悩み」を解決するたび、仕事では味わえない充実感を感じるようになった。58歳で退職すると、公民館を利用した卓球やダンスの愛好会をつくるなど自治会の仕事に打ち込んだ。

 04年には自治会仲間らとともに、地域の高齢者が生き生きと暮らすことを目的にしたNPOを結成した。「年をとっても、目標や夢を持って社会とつながれば、元気でいられるはず」。仲間は年々増え、現在は会員180人を数える。

 浅原さんが住む地区は約40年前に開発された住宅地で、高齢化が進んでいる。仲間と育んだ力を生かして、もっと地域社会に役立ちたい——。その結論が、市議選への出馬だった。「私や仲間には今、生きがいがある。このエネルギーの輪を広めたい」と話す。

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 大阪狭山市の中井新子さん(58)は、市議選に立候補することを「第三の人生の始まり」という。

 3年前、36年間勤めた市役所を退職。女性職員で初めて課長職に登用されたが、2人の子どもを抱え、子育てと仕事の両立に悩み続けていた。「50代で人生を変えたい」と考え、母を継いで詩吟の指導者になろうと思い立った。

 55歳で退職すると、かつての自分と同じ悩みを持つ、働く女性の手伝いをしようと、ボランティアにも参加。週末の幼稚園の庭などを、親子で遊べる広場に開放する活動などを手伝い始めた。地域に根を下ろしてみると、現役時代とは違う視点で、市役所や制度などの問題点も見えてきた。

 例えば、急な仕事が入った人が子どもの一時保育を希望しても、公立保育所では受け入れていない。一時保育を担うボランティア活動もあるが、働く女性をもっと支援できないか。市議会で保育所の民間委託を認める条例をつくればいいのに——。

 次第に「自分が議会に入り、行政経験を生かした橋渡し役になれば、地域に貢献できるのではないか」と考え始めた。1月末、地域の人たちの勧めもあり、市議選への立候補を決めた。

 地域でともに活動する団塊の世代は、まだ少ない。「議員になったら、退職した団塊の受け皿となる組織を作り、行政も巻き込んで地域を活性化していきたい」

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 団塊世代と選挙

 「団塊」は、一般的には1947〜49年にかけて生まれた世代をさす。約700万人に上るとされ、今春から大量退職が始まる。第二の人生を地方議会にかけようとする人も多いようだ。この世代の人たちは、府内では府議と21市町議選に現職が110人以上、元職、新顔を合わると計約150人(22日現在、朝日新聞社調べ)が立候補を予定している。新顔の職歴は、公務員や会社経営など様々だ。団塊世代に各種の選挙への立候補を呼びかける市民組織「団塊世代を地方議会に送るネットワーク(団塊ネット)」(事務局・東京)は、全国で43人の推薦を決定。府内では堺、枚方、貝塚の3市議選に計5人が立つ。

http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000703230003