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2007年03月23日(金) 00時00分

新顔2人 いざ論戦朝日新聞

  ◎知事選告示/2007統一地方選◎

 22日告示された知事選には、前生駒市議の西ふみ子氏(71)=共産推薦=と、前自民党参院議員の荒井正吾氏(62)=自民、公明推薦=の無所属新顔の2人が立候補し、17日間の選挙戦に入った。奈良市内の出陣式ではともに、4期15年半に及んだ柿本善也知事(69)のもとで近年停滞気味とも言われる県政の浮揚策を訴えた。柿本県政を「弱者に冷たい」と切り捨てる西氏は福祉の充実を、柿本県政の発展を誓う荒井氏は産業振興に重点を置く。30日告示の県議選と同じく4月8日に投開票される。

 荒井氏は午前9時半から、撤退した大手スーパーの跡地にある奈良市油阪町の事務所で約750人を集めて出陣式。来賓の柿本知事が「世界遺産などが注目され、奈良に追い風が吹き始めた。これを活用して県政の浮揚、発展を図ってほしい」と激励した。

 01年の参院選で荒井氏とともに初当選した大仁田厚氏(比例区)も「だれにでも公平に接する人。よきアニキを県知事に」とエールを送った。

 西氏は午前9時から同市西木辻町の事務所で県議や支持者ら50人が参加して出発式を開いた後、街頭演説に向かった。

 午後1時すぎ、同和対策事業の一環として奈良市の「ヤマトハイミール食品協業組合」に県などが実施した融資を巡る住民訴訟で、回収を怠った柿本知事らの責任を一部認める判決が奈良地裁で出ると、さっそく県庁前で「不公正な同和行政を完全に終結したい」と訴えた。

   □候補者の第一声(上から届け出順)

  ◆西 ふみ子(にし ふみこ)氏〔71〕 無新・共◆

   ○大型事業やめ福祉へ

 これまでの県政は、100歳のお年寄りから介護ベッドを取り上げるような血も涙もない冷たい政治。格差と貧困が広がる中で、柿本知事が削ってきた福祉サービスを復活させる。そのために、知事になったら特権的な退職金を返上し、給料を大幅に減らす。

 税金の使い方を大本から切り替える。世界遺産・平城宮跡を破壊する遷都1300年記念事業を中止する。また、平城宮跡近くにトンネルを通し、3100億円もかけて高速道路をつくる計画もやめる。生駒市議を4期務めた経験を生かし、人間が人間らしく生きられる「あったか県政」こんにちは、と言えるよう頑張り抜きたい。

県生活と健康を守る会連合会長【元】生駒市議・党市くらし福祉対策委員長・神戸ゴム産業労組委員長・小中学校教諭▽岩手大学芸学部▽生駒市東松ケ丘

  ◆荒井 正吾(あらい しょうご)氏〔62〕 無新・自公◆

   ○柿本県政発展させる

 この十数年間の日本経済が過酷な時期に、柿本知事が健全な財政を維持し県政を守ってきたことを高く評価すべきだ。経済が回復傾向にある中、地方の自立、地方分権が言われる時代になり、奈良も節目を迎えている。柿本県政をなんとか発展させたい。

 奈良が自立するためには、経済力と税収の増加を図りつつ、医療・福祉などの公共サービスを維持していかねばならない。奈良の資源、資産を利用して、地域を元気にしたい。県政に期待される気持ちをひしひしと感じている。声にならない声に耳を傾けて県政の糧にしたいという気持ちで、謙虚に選挙戦を戦っていきたい。

【元】参院文教科学委員長・外務政務官・自民党参院副幹事長・海上保安庁長官・運輸省自動車交通局長・鉄道局次長▽東大法学部▽奈良市西大寺国見町1丁目

  ◎地方の声国に届けて まちおこしの妙案を/望む知事像◎

 久しぶりの新顔対決になった知事選への県民の関心度は? 求める知事像は? 選挙戦がスタートした22日、各地で有権者の声を聞いてみた。

 累積赤字を抱え、財政難に苦しむ大和高田市の総務部長、皆己親重さん(58)は「市町村の意見をよく聞いて、国に対して地方の声をぶつけてくれる人に知事になってほしい」と、地方本位のリーダーを求める。

 行動力、実行力を重視する声も多い。奈良教育大1年の森本桂伍さん(20)は「今の県政は中身が見えない。もっと前に出てはっきりものを言い、政策を実行してくれる知事がほしい」と話す。
 近鉄生駒駅南口の商店街で食肉店を営む内田奈良治さん(78)も「知事室に閉じこもらず、地域の意見に耳を傾けられる人がいい。商店街は大型店の出店でさびしくなった。地域を元気にするアイデアが出せる人を求めています」。

 大胆な変革なしには奈良は変わらない、とする手厳しい意見も。

 川上村で畳店を経営する尾崎幸成さん(70)は「これまで誰が知事になっても奈良は変わらなかった。よほど大胆な知事でなければだめで、過疎の村もよくならない」。

 奈良市の飲食業の女性(54)は「ガチガチの保守風土に新しい風を入れてくれる人がいい。例えば、『大仏商法』から脱却できるような施策ができる人。でも、有権者の間には現状でもなんとか食べていけるという空気が強いから…」とあきらめ顔だ。

 上北山村の土砂崩れで売り上げが減った川上村の喫茶店主中平木由造さん(37)も「いっそ宮崎県みたいに、政党色が見え隠れしないタレントが一度、知事になればいいのに」という。

  ◎知事選に関心ありますか?◎

・職業 性別・年齢 聞いた場所 関心ある(○)関心ない(×) その理由の順

・大学生 男・20歳 奈良教育大 ○ 選挙権を得て初めての投票なので、自分たちのトップに立つ知事は、自分の目で見極めたい

・主婦 女・33歳 生駒市の百貨店 × もっと若い人がリーダーシップをとるべきだ。両候補とも政党色が強く目新しさがない

・会社員 男・45歳 近鉄奈良駅前 ○ 候補者はもっと多いほうがよかったが、今後の奈良の方向づける人を選ぶ良い機会だ

・飲食業 女・54歳 奈良市の商店街 × 奈良は保守的な人が多く、革新的な政治を好まないので、誰が知事になっても変われない

・公務員 男・58歳 大和高田市役所 ○ 財政難に苦しむ市の職員として、候補者がどんな政策を打ち出すのか関心がある

・主婦 女・58歳 近鉄奈良駅前 ○ 将来が不安。医療、福祉などに力を入れて、暮らしをよくしてもらえる知事を選びたい

・畳店経営 男・70歳 川上村の自店 × 平城遷都1300年記念事業など、自分とあまり関係ない政策が争点になっている

・無職 男・75歳 近鉄生駒駅前 ○ 柿本県政は長すぎて、経済も観光も停滞していた。やっと新しいリーダーを選ぶときがきた

http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000000703230003