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2007年03月23日(金) 00時00分

「有権者主役」選択の岐路朝日新聞

 今回の統一地方選は、有権者が従来型の政治に「反乱」を起こす絶好の機会になる。その切り札が、今回から地方選挙でも配れるようになったローカル・マニフェスト(公約集)だ。

 公約実現に向けた期限や財源も明示される。これは契約と同じで、中身を吟味して、どの候補が信頼に足るか判断しなければいけない。選択を間違えば、「大損」することだってある。有権者にはその覚悟が求められている。

 この4年間は、「三位一体改革」の名の下に地方分権が進んだが、地方の側には「地方交付税を大幅に減らされ、国の財政再建に付き合わされただけ。税財源の移譲は不十分」という不満が募っている。地方分権はいまだ道半ば。これから第2期の改革が始まる。

 しかし、国に分権を求める地方の側の足元がぐらついている。昨年、福島や和歌山、宮崎では知事が相次いで逮捕された。いずれも選挙の「しがらみ」が根本にあった。また、財政破綻した北海道夕張市の事例は、地方議会が本来の監視機能を果たしていないことを露呈した。地方が分権の立派な受け皿になれるのか。それを任せられる首長や議員を選ぶ責任が有権者にはある。

 国全体をながめると、都市と地方、正社員と非正社員、いろいろな場面で格差が広がっている。だからこそ、この選挙を通じて、「格差を縮めることが先だ」と地方から声を発する必要がある。

 「阿波戦争」に象徴されるように徳島県民は選挙への関心が高い。それは半面、「勝ち組」になれば、公共事業などのおこぼれにあずかれるという計算が働いていたからではないか。まさに「お任せ民主主義」だった。

 私たち有権者が本来の地方自治の主役になれるか、知事選で幕を開けるこの統一地方選挙が、その岐路だとも言える。

◆ 仮野忠男・徳島文理大教授 ◆

 韓国ソウル市生まれ。68年に早大第一政経学部卒業後、毎日新聞に入社。首相官邸キャップや政治部デスク、論説委員などを歴任した。01年に退社し、04年から徳島文理大総合政策学部教授。四国ローカル・マニフェスト推進ネットワーク事務局長を務める。62歳。

http://mytown.asahi.com/tokushima/news.php?k_id=37000000703230002