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2007年03月23日(金) 21時01分

国と製薬会社の責任を一部認める 薬害C型肝炎東京訴訟朝日新聞

 止血剤として血液製剤を投与され、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染させられたとして、患者と感染者21人が国と製造元の三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)など3社に総額13億5300万円の損害賠償を求めた薬害C型肝炎東京訴訟の判決が23日、東京地裁であった。永野厚郎裁判長は13人について国と製薬会社に計2億5960万円の支払いを命じた。患者は1人2200万円、感染者は1人1320万円の損害額が認められた。

C型肝炎の症状経過

支援者らの前に「勝訴」の幕が掲げられると笑顔がこぼれた=23日午後、東京・霞が関で

判決後、会見する(前列右から)原告の山本信子さん、浅倉美津子さん、山口美智子全国原告団代表、平井要さんら=23日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで

 同種の集団訴訟は全国5地裁で起こされ、判決は大阪(06年)、福岡(同)に続き3件目。フィブリノゲン製剤については、11人が製薬会社に勝訴。うち6人は国にも勝訴した。ただ、国の責任を認める範囲は大阪、福岡判決より狭まった。クリスマシンについては、2人が製薬会社に勝訴し、製薬会社の責任が初めて認められた。

 判決は、フィブリノゲン製剤について、旧ミドリ十字がウイルスを抑える(不活化)処理を変更した85年8月以降、肝炎発症のリスクが高まったと指摘。ミドリ十字が危険性を警告する義務を怠ったと指摘した。

 フィブリノゲン製剤は87年4月に青森県で肝炎の集団感染が判明、国が自主回収を指示した。ミドリ十字はそれまでの非加熱製剤に代えて加熱製剤の製造承認を申請し、国はわずか10日間の審査でスピード承認した。

 判決は、加熱製剤について「見過ごせない副作用リスクを伴う可能性があり、国は製薬会社に強い警告をさせるべきだった」と指摘。臨床試験用に製剤が配布された87年4月から国の法的責任を認めた。ただ、88年6月に緊急安全性情報が出された後の国と製薬会社の責任は認めなかった。

 フィブリノゲン製剤は主に出産時に止血剤として投与された。黄疸(おうだん)や血清肝炎を発症するリスクは早くから知られており、効果とリスクとの兼ね合いを見極める必要がある。しかし、医療現場では安易な投与が広がった。判決は「必要とされる少数の症例を超えて使用され、感染を拡大させた。ここに本件薬害の本質がある」と述べた。

 第9因子複合体製剤のクリスマシン(ミドリ十字)とPPSB(日本製薬)について、東京地裁判決は、84年1月には、感染リスクが高く、治療が困難な場合に投与が限定されるべきだと知られていたのに製薬会社が警告を怠ったと認めた。しかし、旧厚生省の責任までは認められないとした。

http://www.asahi.com/national/update/0323/TKY200703230293.html