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2007年03月17日(土) 15時37分

沖縄の牛乳、946ミリリットル主流 米国・ガロン由来朝日新聞

 店頭に並ぶパック入り牛乳。沖縄でも本土と同じ1リットル容器がおなじみだが、実は沖縄では、ほとんどの商品は中身が946ミリリットルしかない。72年の本土復帰前から、米国のメーカーが主に基地内向けに4分の1ガロン(約946ミリリットル)入りで売っていた名残だ。暑さのせいで乳牛の飼育費が本土より余計にかかることもあり、生乳の値段が割高という事情もある。

 那覇市内のスーパー。売り場には二十数種類の牛乳や乳飲料が並ぶが、1リットル容器の大半が946ミリリットル入り。1リットル入りの商品は数種類しかない。広報担当者は「沖縄ではこれが当たり前。問い合わせもクレームも来たことはありません」。

 ジュースや紅茶なども946ミリリットル入りが主流だ。500ミリ容器の中身も、ほとんどが473ミリリットル。946ミリリットルの半分だ。

 牛乳メーカーで作る県牛乳協会の富里常男事務局長によると、沖縄で地元メーカーが牛乳を市販するようになったのは、65年前後。最初は180ミリリットルの瓶だったが、78年ごろから同量の紙パックが普及。数年後に量を増やす際、946ミリリットルが基準になった。浦添市牧港地区にあった米国のアイスクリームメーカーが牛乳を売る際、自国の単位に従って4分の1ガロン(1ガロンは約3.785リットル)としていたのにならったらしい。

 パックは、どのメーカーも本土製で、大きさは1リットル入りと同じ。沖縄用には内容量の表示を変えて使っている。沖縄に生産拠点を構える本土系メーカーも同じ方法をとっているという。

 2年前に横浜市から那覇市に引っ越してきた主婦清水美奈子さん(42)は、1リットル入りでない「沖縄の常識」に驚いたが、さらにびっくりしたのは値段の高さ。横浜では2本300円程度だったのが、沖縄では1本200円を超えていた。

 本土より少ない量で、なぜ高いのか——。沖縄森永乳業の仲村博人・物流部長は「生乳の価格が本土より高い。販売価格が200円を超えないと利益が出ない」と話す。

 県酪農農業協同組合によると、乳価は、メーカーと同組合の話し合いで決まる。現在は1キログラムで109円。全国平均より30円近く高い。原因は酪農に向かない気候だ。

 ホルスタインは元々、寒い地域の乳牛。亜熱帯の沖縄では寿命が短く、繁殖率も低い。分娩(ぶんべん)間隔も全国平均は434日だが、沖縄では448日と乳が出ない日が長い。1頭あたりの年間の生乳生産量も沖縄では6500〜7千キロ。全国平均の約8千キロを大きく下回る。

 牛の食欲を維持し、生産を増やすため、牛舎では2頭に1台の割合で大型扇風機を置いたり、熱を下げるために霧を出す機械を設置したりしている。組合の国吉克弘参事は「これだけのコストをかけて本土と同じ価格にしたら酪農家はやっていけない」と語る。

 一方、沖縄で1リットル入り商品を売っているところもある。

 コープおきなわは86年に独自ブランドの牛乳の販売を始めた当時は946ミリリットル入りだったが、1年ほどで1リットルに変えた。当時の担当者、上原英幸さんは「沖縄では牛乳の生産量が足りず、脱脂粉乳などを混ぜた加工乳が中心だった。本物の牛乳を本土並みに普及させるのと同時に、量も本土並みにしたかった」と話す。

 だが、「すべての商品が1リットル入りに変わることは今後もないのでは」というのが富里事務局長の見方だ。「沖縄では、1リットル入りは異文化だから」

http://www.asahi.com/life/update/0317/005.html