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2007年03月16日(金) 00時00分

4氏「前哨戦」火花 知事選朝日新聞

 22日告示の知事選に立候補表明している主要4氏による公開討論会が15日夜、中野区であり、早くも舌戦が展開された。

◆防災事業に重点を置く 浅野史郎氏

 東京五輪で夢を与えるのはいいが、環状線整備などの起爆剤や国威発揚のための開催は健全な発想ではない。商業主義やテロ対策、21世紀の五輪は過去の五輪とは違う。都政の中で、どれくらいの位置づけとなるのか。立ち止まって考えればいい。

 都民はおおむね生活に満足しているだろうが、高齢化と災害に不安を感じている。命を守るために、防災公共事業に重点を置きたい。直下型地震に備え、耐震対策に1千億円を充てる。

 高齢化対策は、地域の中で支える考えが大切。介護労働者の待遇改善や、デイサービスなどの複合施設の充実を図る。建物の省エネ化や太陽光など新エネルギーの活用で温暖化にも取り組む。

 全国の都市をリードしていくのが、東京の宿命だ。都民が一緒に政策立案に参加する。地方分権の牽引(けん・いん)車となる。最大・最強の自治体として、もっと気概を持たなくてはいけない。

◆治安問題 前向きに対策 石原慎太郎氏

 都はこの8年間で財政再建を果たした。今後は前向きの施策をしていく。まず都民が安心して安全に暮らせる治安の問題。次は環境、子育て。これらの問題を拡充してよくしていきたい。

 五輪誘致は日本の存在感を世界に知らしめるいい機会だ。人間も社会も国家も夢がないと生きていけない。日本人が大きな夢に向かっていくことはいいことだ。

 都心の交通渋滞は致命的であり、環境悪化も招く。五輪が決まれば国もインフラ整備に力を入れざるをえない。30年間も首都の環状線整備を凍結させ、地方ばかり充実させてきた国を追い込む口実にもなる。

 都が負の遺産を抱えていることは事実だが五輪で都が大型開発をするわけではない。首都機能を分散させる必要もない。

 分権には財政が伴わなければならない。特別区に権限を移譲することに問題もある。財政調整交付金を増やしたので今後どうなるかみてみたい。

◆地域で助け合う社会に 黒川紀章氏

 共生の思想を50年間提唱している。障害者と健常者が世代を越えて地域のなかで助け合う社会をめざし、地域に密着した医療態勢をつくる。

 都の予算は3年後には赤字になる。少子高齢化、人口減のなかでも高齢者から創造性産業をリードするような力を引き出せるようにインフラ整備をする。ニートやフリーターは個性的な道を選ぼうと思っている人たち。大学で講座を開くなどして活用したい。

 都には、ゆりかもめや東京ビッグサイトなど第三セクター事業で借金があるのに情報公開していない。五輪のために積み立てをするから石原都政は後退した。排ガス規制や
自然保護の予算が減っている。

 都心に超高層ビルが集中すれば交通渋滞を引き起こす。環状線だけで解決しない。首都機能を分散させ、霞が関に安価な住宅を建設する。総合的に二酸化炭素を減らすガイドラインをつくり、18%減を目標にする。

◆大型開発型予算 転換を 吉田万三氏

 政治の目標、基本は暮らしの安心だ。大型開発型の予算の使い方を変えなくてはいけない。転換できれば、暮らしに役立つ財源も生まれる。都立病院や都営住宅の充実など、医療や住宅、教育や子育てに力を入れたい。

 今は、正規雇用者が減少するなど、暮らしが大変な時。大型スタジアムの建設など、多額の予算を使う五輪はやめるべきだ。いったん白紙に戻し、暮らしが落ち着いてから考えればいい。石原知事は築地市場移転など、五輪開催の名の下で大型事業を進めようとしているのではないか。

 交通渋滞解消のために道路整備が必要とするが、高層ビルの規制など、都市の成長をコントロールする姿勢が必要だ。それは温暖化対策にもつながる。

 東京には、世界の都市に発信する力がある。これまでの石原知事の発言では、アジア
諸国の賛同は得られない。相互の信頼を深め、理解を高める都市としたい。

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000703160001