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2007年03月14日(水) 00時00分

「築地」移転に異論再燃朝日新聞

 築地市場(中央区)の江東区豊洲地区への移転問題が、知事選やそれに続く中央区長選でも争点の一つになりそうな気配だ。移転先の土壌汚染が国会や学会で取り上げられるなか、移転反対派の水産物仲卸業者らは「食の安全」を訴える。移転をめぐり「断固反対の旗は降ろした」として、事業主体の都と話し合いに応じる構えだった矢田美英区長もここにきて、「移転しなくなれば歓迎」との考えを明らかにした。(上林格)

 共産区議 「都市博中止を求めた候補者が(知事選で)当選したこともあった。移転反対をいう人が当選して移転がなくなったら歓迎ですか」

 矢田区長 「移転しなければ歓迎ですよ。みなさん同じでしょう」
 3月2日の中央区議会。区長選で6選に向け立候補表明している矢田氏は言い切った。

 中央区は10万6千人を超える署名を集めて移転反対運動を続けてきた。だが、移転後に残る場外市場の活性化案を都と具体的に協議するため昨年2月には、「断固反対」の看板を降ろしていた。区長選に無所属で立候補表明している佐藤龍雄氏は移転反対を訴えている。

 豊洲移転は五輪招致とも関係しているが、反対運動も盛り上がっている。今月反対デモを主催した「市場を考える会」は昨年5月、反対する仲卸業者ら約20人で発足。それが今では市場の仲卸約800業者のうち約200業者が加わる。

 同会のメンバーは都内で9日夜、知事選に立候補表明した浅野史郎氏を支援する会の会合に駆けつけた。10日朝には浅野氏が市場を見学に訪れ、場内の食堂で630円の定食と豚汁を食べながら意見交換した。出席者によると「浅野氏は反対に近いニュアンスだった」という。同会幹部は「石原(慎太郎)知事を代えたい。トップが代われば移転がなくなる可能性がある」と話す。

 石原知事は01年に豊洲移転を決めた。それまで都は現在地での再整備に着手していたが、市場を訪れた石原知事は「古い、汚い、危ない」という言葉を残して方針を転換した。

 移転先は東京ガス工場跡地。土壌は環境基準値の1500倍の発がん性物質ベンゼンのほかシアン、六価クロムなどの有害物質によって汚染されていた。都は約41ヘクタールの埋め立て地を、地盤面から4・5メートル下までの土壌汚染を基準値以下に処理し、地表面は厚さ30〜40センチのアスファルトなどで覆い尽くすとしている。

 これに対し日本環境学会は今年2月、都内で開いたシンポジウムで汚染地下水の上昇や有害物質のガス化による噴出の恐れを指摘、「汚染地下水などを残した土地に生鮮食料品を扱う市場を移転することは首都圏の住民の食の安全を脅かす」とする声明を発表した。

 2月の衆院予算委員会でも豊洲の土壌汚染が取り上げられ、若林環境相は「土壌汚染法上の基準をみたしているからということで完全に安全だといいきれるというものではない」と答弁した。

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000703140001