記事登録
2007年03月11日(日) 00時00分

空港利用者争奪戦   読売新聞

 東北で初めて空港と市街地を鉄道で結ぶ「仙台空港アクセス鉄道」が、18日に開業する。仙台〜仙台空港駅間を最短17分で結び、公共バスで約40分かかった所要時間を最大23分短縮する。利用者数の不振が続く福島空港は、さらに厳しい利用者の争奪戦を強いられるのは必至で、県は車を利用した場合の福島空港の利点を強調するなど、戦略の強化を迫られている。

 アクセス鉄道は宮城県、仙台市、JR東日本などが出資する第3セクター「仙台空港鉄道」が運行。8駅17・5キロを、最高時速110キロの電車が1日40往復、1時間に2〜3本の頻度で走る。JRの仙台駅在来線ホームを発着し、空港2階に直結する仙台空港駅では、出発ゲートまで階段を使わずに移動できる。渋滞知らずの定時性も、飛行機の利用者には魅力だ。

 仙台駅と仙台空港の間はこれまで、仙台市交通局のリムジンバス(約40分、910円、17日で廃止)が主な交通手段だった。アクセス鉄道は、途中名取駅にだけ停車する快速(1日4往復)の所要時間が17分、各駅停車の普通が24分で、料金は共に630円。県の試算によると、福島駅から新幹線とバスを乗り継ぐと61分かかった所要時間は、快速の利用で38分、普通でも45分に縮まり、55分(新幹線とリムジンバス利用)の福島空港と早さが逆転する。

 福島空港の定期便は、札幌、名古屋、大阪、沖縄の国内4路線と上海、ソウルの海外2路線。一方、仙台空港は国内9路線、海外7路線があり、便数も多い。県は県中、県南、会津、いわき地域の旅行者には福島空港が依然有利とするが、「仙台に近い県北、相双地域の旅行者には、アクセス鉄道の開業は少なからず影響を与えるだろう」(空港交流グループ)とみる。

 こうした中で県は、仙台空港で1日800円の駐車場代が福島空港では無料である点や、福島市から車を使った場合、仙台空港(84分)より福島空港(69分)の方が時間がかからない点など、車を利用した場合の福島空港の優越性を強調。「公共交通機関を使っても所要時間に大差はない」とし、近く比較広告を新聞に掲載する予定だ。仙台空港を利用する県民の8割以上が車を使用(2005年調査)している現実も、県には追い風だ。

 福島空港では、昨年春に福岡線が廃止された国内線を中心に利用者は減少傾向が続き、05年度はピーク時の99年度より約20万人少ない約55万人に減っている。

 山形、庄内空港に国際線がない山形県は、仙台空港鉄道に5000万円の出資を決め、共存路線を歩み出した。これに対し、本県は「福島空港の良さを県民に理解してもらい、利用者をさらに増やしていきたい」と、あくまで仙台空港に対抗していく構えだ。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news001.htm