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2007年03月10日(土) 21時56分

ドラマ「冬の時代」に春? フジ・日テレ、連ドラ枠増朝日新聞

 テレビ各局の春の番組改編が発表された。4月から民放キー2局で連続ドラマ枠が増える。視聴率低迷で、長く「冬の時代」といわれたドラマだが、やっと春が訪れるのだろうか?

 連ドラ枠を増やすのは日本テレビとフジテレビ。日テレは火曜21時からの単発2時間ドラマを終了させ、22時から1時間のドラマを始める。第1弾は少女スパイとオタク青年が難事件に挑む冒険活劇「セクシーボイス アンド ロボ」。原作は黒田硫黄のマンガで、脚本は「すいか」「野ブタ。をプロデュース」を手がけた木皿泉。映画で話題を集める松山ケンイチと大後寿々花が主演する。10代と親世代がターゲットだ。

 一方、フジは土曜23時台に45分の連ドラ枠を新設する。若者向けに、従来のドラマの既成概念を打ち破るような企画を並べたいという。第1弾は「ライアーゲーム」。こちらも原作はマンガで戸田恵梨香が主演。多額の現金を奪い合う過酷なゲームに巻き込まれる女子大生が大金を得るか、負債を背負うか。壮絶なマネーバトルの人間模様を描く。ドラマ離れが著しいといわれる10〜20代をねらう。

 「季節ごとに新しい話題を提供する連続ドラマはいわば“局の顔”。ドラマが元気だと局のイメージがよくなる」(民放幹部)というほど各局ともドラマ復調への期待は強い。

 また、民放が映画製作で成功するケースが増え、局のディレクターが映画監督として活躍することも期待されるようになった。同局の鈴木克明編成制作局長は「邦画が活況の中、テレビ局も新しい役者や作り手を発掘して育てていかなければならない。ただ従来のドラマ枠はどこも伝統があるため、新しい人材を登用するのに勇気がいる。23時台ならやりやすい」。

 今回増えた2枠はどちらもターゲットが明確なのが特徴でもある。

 ゴールデン帯の連ドラ枠は90年代に乱立したが、激しい競争と視聴率低下で減少した。00〜04年で、民放キー局の連ドラ枠は少なくとも四つ消えた。一方、昨年、テレビ朝日が連ドラ枠を新設するなど回復の動きも出てきた。最近は松本清張シリーズや「白い巨塔」「14才の母」など、ファンを超えて世間の話題になるドラマも増えてきた。

 既存のドラマ枠でも、万人受けをねらった無難なドラマより、視聴者層を絞り、枠ごとに色合いを変えている傾向がみられる。TBSは人気ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」のあとにホームドラマ「夫婦道」を据える。「華麗なる一族」のような重厚路線としては、五味川純平原作の愛憎劇「孤独の賭け」を用意。日曜劇場には織田裕二主演のホームコメディー「冗談じゃない!」。テレ朝は、40代には懐かしい庄司陽子の名作マンガ「生徒諸君!」や、若者中心にカルト的な人気を呼んだ「時効警察」が始まる。

 フジは若者向けのラブコメディー「プロポーズ大作戦」(月9)のほか、05年に幅広い層から支持された「鬼嫁日記」(関西テレビ制作)を、舞台設定を一新して放送。日テレは10代と親世代に人気だった「喰いタン」の続編を放送する。

 ドラマ分析が専門の日大芸術学部助教授の中町綾子さんは「冬の時代には、多くの人をとりこもうとして大味になり、固定ファンまで失っていった。だが今回は、見たい作品とそれ以外にはっきり分かれる。テレビ局がようやくみんなに向けて作るのをやめたな、という印象がある。面白い作品はターゲットを絞らないとうまれてこないと思う」と期待を寄せる。

http://www.asahi.com/culture/tv_radio/TKY200703100120.html