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2007年03月05日(月) 10時01分

民主党の「1000円基準」に安倍タジタジ日刊ゲンダイ

 支持率アップと選挙目当ての格差是正策として、政府が今国会での成立を目指す最低賃金改正法。焦点は最も低い青森県や沖縄県などの時給換算610円が見直されるかどうかだが、民主党が「最低賃金1000円」の新基準を持ち出したため、政府や財界は及び腰だ。

「論外。とても不可能。会社が潰れては何もならない」——。
 日商の山口信夫会頭は1日、最低賃金1000円について色をなして反対した。柳沢厚労相も「800円も困難」と言っている。そもそも「格差をなくすことは不可能」と平気で言い放つ安倍首相に最低賃金の大幅引き上げは期待薄だ。
 しかし、「アップさせる」と言った手前、現状維持の“ゼロ回答”で逃げ切れる可能性は低い。日本の水準(全国平均で673円)は先進国の中で最低だ。フランスは1162円、英国は1096円と多くの国が時給換算で1000円を超えている。
 そんな中で、安倍政権を困惑させる試算も出てきた。労働運動総合研究所が、最低賃金を1000円に引き上げれば、700万人の労働者の賃金が改善され、消費支出が1兆3230億円も増えると発表したのだ。
「政府や財界首脳は、中小企業の経営圧迫を盾にして引き上げに難色を示している。ところが、この試算では、低所得者層が食料品などに支出することで、関係する中小企業に波及すると断じている。最低賃金の引き上げは、中小企業を苦しめるどころか、むしろ潤わせる可能性が高いのです。もともと財界首脳は、自社のコストが下請けの賃金アップの影響で拡大するのを懸念しているだけ。中小企業の経営を心配しているわけではありません」(シンクタンク研究員)
 昨年の上場企業の全体の利益はザッと40兆円。このうち10兆円は賃上げ抑制と非正社員から巻き上げた分で、本来は被雇用者に分配すべきものだ。それでも財界と一緒になって安倍政権が引き上げを渋れば、支持率はさらに下がるだろう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070305-00000011-gen-ent