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2007年02月26日(月) 00時46分

北朝鮮高濃縮ウラン計画、ホント?朝日新聞

 北朝鮮による高濃縮ウラン(HEU)核開発計画は実際どこまで進んでいたのか。第2次朝鮮半島核危機と呼ばれる事態の発端となった同計画をめぐり、米国内で問い直す声が出ている。米政府はなおも疑惑を追及する構えだが、6者協議の米首席代表のヒル国務次官補が完全な証拠をつかんでいないことを示唆。開戦の根拠となった大量破壊兵器が存在していなかったイラク戦争と同様、不確定な情報を前提としていた可能性も指摘され始めている。

 ヒル氏は22日の講演で米当局者としては異例の率直さをみせ、「HEU計画に対する米政府の情報は限定的だ」とのニュアンスを含ませた。北朝鮮が計画に使用可能なアルミ管を入手したと指摘する一方、「計画にはもっと多くの部品が必要。生産技術があるのかも分からない」と述べた。

 94年に結ばれた米朝枠組み合意で、北朝鮮の核開発は凍結されるはずだったが、ブッシュ米政権発足後は関係が悪化。02年10月にケリー国務次官補(当時)が訪朝した際、金正日(キム・ジョンイル)総書記の最側近、姜錫柱(カン・ソクチュ)第1外務次官が認めたとされるのがHEU計画だ。その後、枠組み合意は崩壊し、北朝鮮は核実験を強行した。

 米国務省のマコーマック報道官は23日の記者会見でHEUに関する質問を受け、「(02年の協議の)部屋にいた米代表団のだれにでも聞いてみればいい。本当にあるのか繰り返し確認したが、(北朝鮮側の)答えは『イエス』だった」と語った。

 ただ、HEU計画の存在を認めたと主張するのは米国だけで、北朝鮮は一貫して否定。当初から米側情報当局者の間では情報の確度をめぐる議論があったとされる。

 核問題に詳しい米民間研究機関、軍備管理協会のキンボール所長は発覚直後から疑問の声を上げていた。「北朝鮮が計画を追求したと疑うに足る理由はあるが、どこかの時点で中止したのかもしれない」。先の6者協議直前に訪朝した科学国際安全保障研究所(ISIS)のオルブライト所長も、ウラン濃縮に必要な「大規模な遠心分離施設は北朝鮮には存在しないと見られる」と話す。

 韓国の李在禎(イ・ジェジョン)統一相は21日、国会で「北にHEUがあるという何の情報もない」と明言した。

 6者協議で合意された「初期段階の措置」の中にHEUは直接言及されておらず、米保守派などは強く批判している。米政府は今後も重視していく方針を変えておらず、設置が決まった作業部会で説明を求めていく考えだ。しかし、ヒル氏は「アルミ管が計画に使われていないのなら、どこに行ったのかを話し合うことができる」と述べ、計画の存在に固執しない柔軟姿勢をみせている。

 オルブライト氏によると、北朝鮮の金桂寛(キム・ゲグァン)外務次官と平壌で会談した際、金氏はHEU計画の存在を改めて否定したうえで、「我が政府は疑惑を払拭(ふっしょく)する」と自信をのぞかせたという。

http://www.asahi.com/international/update/0226/001.html