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2007年02月16日(金) 03時02分

「読売新聞に情報」 自衛隊警務隊が1佐を聴取朝日新聞

 中国海軍の潜水艦が南シナ海で事故のため航行不能になっていると報じた05年5月の読売新聞記事をめぐり、自衛隊内の警察組織である警務隊が、読売新聞側にこの情報を伝えたのが防衛省情報本部の1等空佐(49)だったとみて、自衛隊法違反(秘密漏洩)の容疑で事情聴取や自宅の捜索をしていることが分かった。警務隊による捜査は「秘密保持の徹底」を自衛隊員に強く意識させる狙いがあるとみられ、現時点では読売新聞側は捜査対象とされていない模様だ。ただ、報道機関側への情報提供者をめぐる捜査は極めて異例で、国民の「知る権利」や報道の自由との兼ね合いで議論を呼びそうだ。

 この記事は05年5月31日付朝刊に掲載された。潜水艦を中国海軍所属の「明」級のディーゼル式攻撃型潜水艦と特定し、「300番台の艦番号がつけられている」ことなどを日米両国の防衛筋が確認したと報じた。

 関係者によると、記事中には米側から提供された極秘情報も含まれていたとされる。この点を重視した当時の防衛庁調査課は記事掲載後、被疑者不詳のまま自衛隊法違反(秘密漏洩)の疑いで警務隊に刑事告発した。

 00年に明らかになった海上自衛隊3佐による在日ロシア大使館武官への秘密漏洩事件を直接のきっかけに、01年10月の自衛隊法改正で、防衛庁長官(現・防衛相)が指定する「防衛秘密」を漏らす罪が新設された。隊員だけでなく、防衛省と契約関係がある防衛産業などの民間企業にも守秘義務が課せられた(違反した場合は5年以下の懲役)。防衛秘密は電波情報、画像情報など10項目が列挙され広範囲に及ぶが、防衛相の指定を厳格に制限する規定がなく、指定が乱発されて防衛情報が広く国民の目から隠される可能性がある。

 さらに、防衛秘密漏洩を「教唆」する罪も新設され(違反した場合は3年以下の懲役)、防衛庁(当時)側の説明では、防衛情報を取材・調査する記者や研究者の活動も、脅迫や贈賄、男女関係など情を通じた実態があれば「教唆」と認定されるとされた。「知る権利」が著しく阻害される可能性が指摘され、国会でも取り上げられた。

http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY200702150394.html