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2007年02月05日(月) 00時00分

「共学」なのに29年間、男子生徒不在朝日新聞

  県立第一高校(熊本市)で29年間、男子生徒不在が続いている。1903(明治36)年に県立高等女学校として開校し、俳人の中村汀女、歌人の安永蕗子、料理研究家の江上トミら人材が輩出した。半世紀以上も前から「共学」なのだが、地元では「女子校」の印象も強い。九州・沖縄・山口にある共学の県立高校普通科で、第一高以外に女子校化した学校や、逆に男子校化している例はないという。(長崎緑子)

  「男子トイレもあります」。毎年、中学校で開く説明会で第一高は部活動やカリキュラムとともに「共学」を強調する。ただ、現状では男子トイレの個室も女子が使っている。

  同校は49年に共学となり、53年に過去最高の男子128人が卒業した。だが、翌年の学区制変更で学区が広がり、男子の入学が激減。60年に男子卒業生はゼロになった。

  憂慮した同窓会は、熊本市内の県立高校普通科が生徒を一括募集して配分する「総合選抜」を唱えたが、実現しなかった。69年から理数科を設け、男子も入学したが、78年卒を最後に再び不在に。理数科も廃止された。

  56年卒の森宏・同窓会長(68)は94〜98年度に校長を務め、「男子クラスを設け、野球部かサッカー部をつくりたい」と訴えた。だが、県教委から「共学校に男子枠の必要はない」と断られた。

  森会長は高校時代を「運動場や体育館を思いっきり使えたり、脱いだ服を女子がたたんでくれたりした」と話す一方で、「女子が集まると何とも言えないパワーで圧倒された」。あるOGは、クラスに1人だけいた男子の姿を「いつも小さくなっていてかわいそうでした」と振り返る。

  同校に近い、市立江原中の木原哲典校長は37年間の教員生活の中で、男子から第一高への進学相談を受けたことがない。「女性の社会進出のような行政や世論の後押しがない。送り出す方も『苦労するだろう』と考えてしまう」

  別の市立中3年の男子は「女子校のイメージが強く、受験は考えていない」。一方で、第一高は地元国公立大への進学者も多く、78年以降も数度、男子が受験したが合格者はいないのだという。長年の男子不在に、「女子校の伝統が強いとしか言えない。共学を強調しても来てくれないのでは仕方ない」と関係者は半ばあきらめ気味だ。

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