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2007年01月30日(火) 00時00分

『あるある』捏造 真相究明、進展せず 東京新聞

 関西テレビ制作の情報番組「発掘!あるある大事典2」での実験データの捏造(ねつぞう)問題で同局は二十九日、社内調査の中間報告を発表した。しかし、誰が、どのような理由で捏造したかはまったく明らかにされなかった。真相究明は外部の調査委員会の報告を待つ方針を示し、事実上、先送りした格好だ。 (小田克也)

 「捏造を誰がやっていたのか分かっている」。関西テレビの福井澄郎取締役(編成局・制作局担当)は同日の記者会見で、こう述べたが、その番組担当者名は公表しなかった。

 また、その担当者が捏造を行った理由についても、「話は聞いているが、われわれの納得のいくものではない。客観的な調査を行って発表したい」として、外部の調査委員会の報告を受けて発表する考えを示した。

 同局としては調査委員会の報告がまとまるまで、捏造を行った番組担当者名や動機などについて、公表を控える方針とみられる。

 ただ、こうした対応で視聴者の理解を得られるだろうか。実際、この日の会見でも、記者団から「捏造した理由について事情を聴いているのであれば、分かっていることだけでも明らかにすべきだ」などと厳しく突っ込まれた。

 納豆ダイエットを取り上げた七日の放送分では、米国の大学教授の発言として紹介されたコメントが、実際に発言されたものではなかった。この点についても福井取締役は、「見過ごした」と述べるにとどめ、なぜチェック機能が働かなかったか、十分な説明はなされなかった。

 さらに同日の放送分は、制作会社「日本テレワーク」が請け負い、別の制作会社「アジト」に発注されていたが、担当のディレクターら七人のうち二人にしか聞き取りしていなかったことも明らかにした。

 「あるある〜」をめぐっては、「レタスの催眠効果」「みそ汁によるダイエット」など新たな捏造疑惑が次々に浮上している。ただ、こうした番組についても関西テレビは、取材対象者にまだ事実関係を確認していない上、真相究明について、やはり外部の調査委員会に委ねる方針だ。

 同局としては、客観性を重視するとの理由から、調査委員会による専門的な調査を優先する構えだが、新たな疑惑が次々と浮上する中、「第三者任せ」「問題先送り」との印象を持たれ、視聴者の不信感を増幅することにもなりかねない。

     ◇

 「発掘!あるある大事典2」調査委員会のメンバーは次の通り。

 音好宏・上智大学助教授(メディア論)▽熊崎勝彦・元東京地検特捜部長(日本プロ野球コミッショナー顧問)▽鈴木秀美・大阪大学大学院教授(メディア法)▽村木義彦氏(メディア・プロデューサー)▽吉岡忍氏(作家)

■検証番組放送へフジ社長陳謝

 今回の捏造問題について、関テレの系列キー局であるフジテレビの村上光一社長は二十九日の定例会見で、「事実でない虚偽内容が多数含まれ、あってはならない不祥事。視聴者、スポンサー、放送界全体に多大な迷惑をかけた」と陳謝、関テレの調査結果を踏まえた検証番組を放送する意向も示した。同日までに局に寄せられた苦情は五千三百〜五千四百件(電話約2100件、メール約3200件)に達したという。

 日本テレワークの筆頭株主の代表者として、自身が社外取締役を務めていることの責任問題に関しては「真相究明を厳正に行い、二度とこのようなことを起こさないよう、社内体制を整えていくのが、社外役員としての責任」と述べた。

 番組全般に対する社内のチェック体制については、「担当者が番組ごとにそれぞれのプロダクションに出向き、確認するというチェックの流れをつくっている」と説明。「制作マンとして危ないのは慣れ。ここまでやっていいのではというような慣れ、境界線がゆるみ始めている部分があり、歯止めをかけていかなければならない」と危機感をにじませた。

 また、検証番組については「必要性は感じている」とした上で、「中途半端な形でやるのはよくない。ある程度の調査結果を踏まえて、きちんとした検証番組を検討に入れている」と述べた。

 番組打ち切りに伴い、来月四日の午後九時からは代替番組として「ジャンクスポーツ!」の拡大版を放送し、次週以降の放送予定は白紙という。

■放送界全体で強く反省自戒を BPOが声明

 関西テレビの情報番組「発掘!あるある大事典2」の捏造問題に関連し、放送倫理・番組向上機構(BPO)の清水英夫理事長は二十九日、加盟する放送局に対し、放送界全体として強く反省自戒し、信頼回復に努めることなどを求める声明を発表した。

 声明は、BPOにも視聴者から抗議が相次いでいることに触れ、「放送局の姿勢や倫理が問われる内容。緊張感や責任感を著しく欠いた、とのそしりを免れ難い」と指摘。その上で「このような事態が繰り返されれば、放送に対する視聴者の信頼を失墜させ、放送の自由を危うくする」とした。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070130/mng_____hog_____000.shtml