記事登録
2007年01月23日(火) 13時56分

1月23日付・よみうり寸評読売新聞

 〈納豆主義の生き方〉——斎藤茂太さんの著書の一つ。〈豆腐の如(ごと)く〉というのもある。精神科医にして名エッセイストの氏は畑の肉、つまり豆の製品、納豆も豆腐も大好物だった◆「アルコール健康医学協会」の会長でもあった氏は、お酒を飲むときは、大豆製品をとるようにすすめてもいた。この好みは父の歌人茂吉ゆずりだ◆〈納豆主義の…〉では納豆の歴史や伝説にも触れている。もっとも有名なのは八幡太郎義家の納豆伝説。奥州遠征で納豆を兵糧にしたという話だ。納豆の名の起こりは寺の納所(なっしょ)で作ったからと「本朝食鑑」にある◆納豆は室町時代から親しまれ、江戸時代さらに普及した。〈山寺に寒さをたたく納豆汁〉は芭蕉、〈納豆と同じ枕に寝る夜かな〉は一茶、〈朝霜や室の揚屋の納豆汁〉は蕪村◆〈烏(からす)の啼(な)かぬ日はあれど、納豆売りの来ぬ日はなし〉で、江戸川柳に〈納豆と蜆(しじみ)に朝寝おこされる〉とある。納豆が長く庶民に好まれたのは安く、うまく、栄養があるからだ◆ダイエットにいいなど、捏造(ねつぞう)のTV番組は余計なお世話と納豆は怒っている。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070123ig05.htm